研究課題
(a)非平衡統計力学における線形応答理論に基づいた平衡分子動力学法(EMD)と(b)Navier-Stokes方程式に基づいた非平衡分子動力学法(NEMD)による両面からのアプローチを試みた。(a)EMDを用いた解析では、壁面摩擦応力の自己相間関数(FAC)のGreen-Kubo積分がゼロに収束するために、滑り摩擦係数を評価できないという問題が長年指摘されてきた。本研究では、平衡場における粗視化された流体運動がLangevin方程式により表されるとの考えに基づき導出した理論式がEMDにより得られたFACをよく再現することを示し、関数のフィッティングパラメータとして滑り摩擦係数を同定できることを示した。同時に我々が以前に提案したFACの時間積分のピーク値を滑り摩擦係数とする方法は壁面の疎液性が強いほど有効性の高いことを理論的に明らかにした。(b)分子スケールの流れであっても壁面と流体力学的境界の間の領域を除けば、Navier-Stokes方程式とNavier境界条件による記述が有効であり、NEMDの解析によってNavier境界条件の適用される流体力学的境界が同定できることを示した。滑り摩擦係数が周波数依存すると一般化することにより、流体の固液界面における粘弾性的振る舞いについても連続体力学によって分子動力学法による計算結果をよく再現できた。この解析によって同定された流体力学的境界の位置と(a)の解析で得られた粗視化された流体の重心位置は近いものの同じではない点が興味深い。
2: おおむね順調に進展している
EMD、NEMDによるアプローチともに当初の目標をほぼ達成できた。
当初計画からの変更はない。
残額は誤差の範囲内と考えます。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
The Journal of Chemical Physics
巻: 150 ページ: 044701~044701
10.1063/1.5053881
Soft Matter
巻: to appear ページ: to appear
10.1039/C9SM00521H