研究課題/領域番号 |
18K03933
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡村 誠 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (00185472)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乱流のクロージャー理論 |
研究実績の概要 |
乱流は複雑な振る舞いをする予測不可能な流れである.そのような複雑な流れを理解するための一つの方法は,平均流を考えることである.しかし,平均流に関する時間発展方程式は閉じないという悪名高い乱流のクロージャー問題が存在する.本研究では,剪断乱流のような実用的な乱流の,調整パラメーターを含まないクロージャーモデルを以下の三つのステップを踏んで導出することを最大の目的としている. (1)レイノルズ数が無限大のクロージャーモデルを有限レイノルズ数の場合に拡張 (2)一様等方性乱流の物理空間におけるクロージャモデルを導出 (3)剪断乱流の物理空間におけるクロージャーモデルを導出 2018年度は上記課題(1)に実施して,有限レイノルズ数のクロージャーモデルを使って,エネルギースペクトル,エネルギー散逸率,縦速度微分の歪み度のレイノルズ数依存性を調べて結果を得た.ここまでは予定通りの成果が得られた.,2019年度は上記課題(2)に取り掛かったが,予想に反して物理空間におけるクロージャモデルを導出に手間取っている.したがって,(2)に関する成果は今のところない.今後,物理空間におけるクロージャモデルを導出を継続するか否かを検討中である.その代わり2019年度はレイノルズ数が無限大のクロージャーモデルと有限レイノルズ数のクロージャーモデルを使って,レイノルズ数をどんどん大きくしていった場合に両者から得られるエネルギースペクトルが一致するのか否かを調べた.エネルギースペクトルのほとんどの部分では両者はほぼ一致するのであるが,不思議なことに高波数領域で両者のずれが見られる.2020年度はこのずれを詳細に調べる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,剪断乱流のような実用的な乱流の,調整パラメーターを含まないクロージャーモデルを以下の三つのステップを踏んで導出することを最大の目的としている. (1)レイノルズ数が無限大のクロージャーモデルを有限レイノルズ数の場合に拡張 (2)一様等方性乱流の物理空間におけるクロージャモデルを導出 (3)剪断乱流の物理空間におけるクロージャーモデルを導出 2018年度は上記課題(1)に取り掛かり,おおむね順調に進んだ.2019年度は上記課題(2)に取り掛かったが,停滞している状態である.そのため,2019年度は上記課題(1)より得られたクロージャーモデルを使って,高レイノルズ数のエネルギースペクトルと無限大のエネルギースペクトルの関係を調べて興味ある結果が得られた.基本的にはフーリエ空間での導出を物理空間に置き換えるだけなので,原理的には可能である.実際に物理空間のクロージャ―モデルを導くことは可能なのであるが,それを使ってエネルギースペクトルを数値的に求めるのは多大な時間がかかるので現実的ではない.工夫が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は上記課題(1)が達成できたが,2019年度では,上記課題(2)の実施が滞っている状態である.具体的には,クロージャーの導出をフーリエ空間から物理空間に拡張するのは,予想に反してかなり困難が伴うことがわかった.今のところ,この困難を回避する妙案はないが,2020年度はこの困難に対処する方法を模索することになる.もし困難の回避策が浮かばない場合に備えて,上記課題(1)より得られたクロージャーモデルを使って,高レイノルズ数のエネルギースペクトルと無限大のエネルギースペクトルの関係を調べることも継続する予定である.もし(2)一様等方性乱流の物理空間におけるクロージャモデルを導出を断念した場合には,上記課題(3)を「剪断乱流のフーリエ空間におけるクロージャーモデルを導出」に変更して,研究を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越金は次年度に購入する予定の計算機の経費に追加する.
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