乱流は複雑な振る舞いをする予測不可能な流れである.そのような複雑な流れを理解するための一つの方法は,平均した流れである平均流を考えることである.しかし,平均流に関する時間発展方程式は閉じないという悪名高い乱流のクロージャー問題が存在する.本研究では,最終的には剪断乱流のような実用的な乱流の,調整パラメーターを含まないクロージャーモデルを以下の三つのステップを踏んで導出することを目的としている. (1)レイノルズ数が無限大のクロージャーモデルを有限レイノルズ数の場合に拡張 (2)一様等方性乱流の物理空間におけるクロージャモデルを導出 (3)剪断乱流の物理空間におけるクロージャーモデルを導出 2020年度は上記課題(1)を実施して,有限レイノルズ数のクロージャーモデルを導いて,エネルギースペクトル,エネルギー散逸率,縦速度微分の歪み度のレイノルズ数依存性を調べる予定であった.しかし,有限レイノルズ数を実現するために導入した外力について思わぬトラブルがあった.そこで,2021から2022年度は,外力を与える波数領域を矩形関数からデルタ関数に変更した.デルタ関数の不連続性は矩形関数の有限から無限大になる.しかし,この無限大の不連続性をうまく使うと,デルタ関数を含むところとそうでないことを分離することが可能になり,有限の不連続性の問題を避けることができた.しかし,今まで見逃していた(新たな)クロジャーに関する問題が発生したので,2023年度は考え方を大きく変更した.有限レイノルズ数を実現するために外力の代わりに境界条件を与えることにした.これにより,外力と流速の相関関数の新たなクロージャー問題を解決できた.現在,有限レイノルズ数のクロージャーモデルを境界値問題として扱い,具体的に解を求めているところである.
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