研究課題/領域番号 |
18K03934
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小笠原 紀行 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00552184)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 液膜 / 気泡 / 気泡クラスタ / 電解質 / 界面活性剤 / 光干渉計 |
研究実績の概要 |
【薄い液膜の排水破断過程における電解質および界面活性剤の影響の解析】剛体壁と接近する気泡間に形成される薄い液膜を対象とした光干渉法による膜厚分布計測に関して,既存のマイカ基板を剛体壁として実験装置を改良した.また,実験結果の信頼性向上のため再現性の確認を目的としたデータ解析手法を検討した.超純水,二種類の電解質溶液(酢酸ナトリウム水溶液,硫酸マグネシウム水溶液),界面活性剤水溶液(Triton X-100水溶液)を用い,接近速度を実験条件とした排水時の膜厚分布形状の変化を取得し,各溶液における比較を行った. 【斜め平板下を上昇する球形気泡群のクラスタ化に内在する気泡間相互作用の解析】二次元的な拘束を受ける球形気泡の群運動に関して,斜め平板下を上昇する球形気泡群ではクラスタ化が生じるが,単一細管から生成した気泡列の観察から2個から数個程度の気泡群の運動を解析し,クラスタ化に関わる気泡間相互作用の詳細を解析した.また,特定の気泡に注目した解析のみならず,気泡間相互作用の平均的な描像を明らかにするために統計的なデータ処理を実験結果に施した.特に,気泡発生部からの測定領域までの距離を変化した実験を行い,過渡的な上昇過程における気泡間相互作用の変化についてより詳細な解析を行い,気泡表面の境界条件がその相互作用に及ぼす影響についての知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
液膜排水過程の光干渉法による膜厚分布計測に関しては,より清浄で分子的に均一な固体壁面として天然マイカの表面を用いてきたが,そのマイカ板が気泡接近に伴いたわんでしまう問題があった.これに対して実験装置に改良を施すことでたわみの影響を軽減した実験ができるようになった.液相に含まれる不純物の影響を評価するため,超純水,二種類の電解質溶液(酢酸ナトリウム水溶液,硫酸マグネシウム水溶液),界面活性剤水溶液(Triton X-100水溶液)を用い,気泡の固体平面への接近速度を1から2000マイクロメートル毎秒まで変化させた実験を再現性の評価と共に行い,薄膜の形成過程で見られるディンプル形状に対して,ディンプル深さやリム幅といった特徴的な幾何学量に注目した評価を行った. 斜め平板下を上昇する球形気泡群のクラスタ化に内在する気泡間相互作用の解析では,単一細管を有する気泡発生部から一定の時間間隔で発生する単分散の気泡径分布を有する球形気泡群を発生し,初期に等間隔に一列に並んでいる斜め平板下を沿うように上昇する気泡レイノルズ数が100程度の気泡群による相互作用の解析を行った.特に,気泡発生部から計測領域までの距離を変化した解析から,助走距離が短い条件においてフリースリップ気泡の場合のみある程度離れた縦並びの二気泡において後続気泡が横方向に移動する傾向が確認された.しかしながら,より上部の計測領域においては,この後続気泡の横方向への移動傾向は逆向きになって縦並びの安定した気泡配置が確認されたことから,過渡的な相互作用に関するより詳細な解析が必要となる.
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今後の研究の推進方策 |
まず,気泡壁面間の液膜排水過程については,気泡径や気泡接近速度における新たな条件におけるデータ取得を行う.また,同時に理論的なモデルとの比較を目指し,潤滑理論による液膜形状の変化の解析を試みる. 原子間力顕微鏡による気泡と壁面の相互作用力と膜厚分布の同時計測では,まず気泡プローブ制作過程の検討をさらに進める.気泡プローブの安定した製作法の確立と同時に,倒立顕微鏡の光源として干渉画像が得られるものを選定する.その後は,高速度カメラによる撮影と原子間力顕微鏡による計測を同期したシステムを構築し,相互作用力と膜厚分布の同時計測の計測システム構築を目指す. 斜め平板下を上昇する球形気泡群のクラスタ化に内在する気泡間相互作用の解析では,現状では気泡レイノルズ数が100程度のデータのみが得られている.したがって,まずこの気泡レイノルズ数の影響を考察するためさらなる実験データを取得する.また,現在までに明らかになった過渡的な気泡間相互作用に変化に対して,更なる実験データの取得から信頼性の向上をし,助走距離による相互作用の変化の詳細について解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
原子間力顕微鏡を用いた気泡と壁面間の相互作用力と液膜相対膜厚分布の同時計測において,干渉画像用のLED光源や顕微鏡用の光学部品の購入まで進まず,その分の費用が次年度使用額として生じている.なお,本年度の使用計画は,初年度に購入する予定になっていたが購入できなかったもので,購入予定品の変更はない.
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