研究課題/領域番号 |
18K03936
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 光太郎 工学院大学, 工学部, 教授 (80252625)
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研究分担者 |
横田 和彦 青山学院大学, 理工学部, 教授 (70260635)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジェットベクタリング / 噴流 / コアンダ効果 / 周波数 |
研究実績の概要 |
本研究課題には解明すべき2つの問題がある.一つはコアンダ面を伴う二次流れを用いた一次噴流の方向制御であり,もう一つは単独シンセティックジェットの方向制御である. すでに一次噴流の方向制御にコアンダ面を伴う二次流れを利用する流体力学的スラストベクタリングが提案されており,これまでも一定の研究成果が報告されている.しかし,現象が複雑であることから支配パラメーターの特定には至っておらず,系統的な調査は不十分である.本研究は,流体力学的スラストベクタリングに関する基礎的研究であり,一次噴流の進行方向に及ぼすコアンダ面近傍の二次流れの影響を系統的に調べた.特に本年度は二次流れとして定常噴出と定常吸引を適用し,流動特性を調べた.二次流れが噴出の場合と吸引の場合を比較すると,噴出ではいわゆるデッドゾーンが大きく,一次流れに対して二次流れの運動量(運動量比)を大きくしないと一次流れを偏向させることができないのに対して,吸引では,わずかな運動量比で一次流れを曲げることができる.しかしながら,すぐに飽和領域に到達し,制御可能領域は極めて小さいことがわかった. 単独シンセティックジェットの方向制御に関しては,昨年度に引き続き非対称階段形状スロットを利用したジェットベクタリングについて解明を試みた.ここでは従来のくちばし形状スロット同様,同一幾何形状において,無次元周波数の調整のみでジェットの進行方向を制御可能であることを示した.具体的には適正なステップ長さ,ステップ高さを設定すると,低無次元周波数では直進するのに対して,無次元周波数が高くなるほど噴流の偏向度が大きくなることがわかった.ただし,くちばし形状スロットと非対称階段形状スロットの偏向メカニズムについては不明な点が残されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コアンダ面を伴う二次流れを用いた一次噴流の方向制御に関して,初年度は二次流れのスロット出口流速を熱線流速計で計測していたが,吸引条件では速度分布により,正確な平均出口流速計測が困難であることが判明した.そこで,2年目である2019年度は,実験装置の一部改良を行った.特に吸引条件下での2次流れのスロット出口平均流速をより簡便かつ正確に計測するために流路内にベンチュリー流量計を設置した.また,数値計算についても結果が得られつつあり,現在,計算結果の妥当性について検証中である.ただし,噴流の偏向角度は円柱表面の境界層に依存するため計算コストなどの問題から,実験結果と定量的に比較するには困難が伴う. 非対称階段形状スロットを用いた単独シンセティックジェットの方向制御については,片側ステップのみに着目していたが,現在は両側ステップでの流れ場の検討に移っている.両側階段形状スロットに変更することでこれまで片側階段形状スロットでは噴流偏向角度90度の範囲で噴流進行方向を制御可能としていたが,制御可能な噴流偏向角度の範囲をわずかに大きくなることがわかったが,連続的制御には課題が残る.また,非対称流れ場では生成される渦列が千鳥配列になる条件が存在することもわかった. 得られた成果の一部については報告を行っており,コアンダ面を伴う二次流れを用いた一次噴流の方向制御について,4月の査読付国際会議にて発表予定であったが,新型コロナウイルスの影響で現在は開催延期となっている.非対称階段形状スロットを用いた単独シンセティックジェットの方向制御に関しては,ジャーナルや国際会議などで成果発表した. したがって,本研究は概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2020年度は,噴流の偏向メカニズム解明に軸足を移しつつ前年度までの研究手順を踏襲し,幾何形状や振動特性をパラメーターとした系統的調査を継続する.具体的には可視化観察実験と速度分布計測から時間平均の噴流構造および噴流の非定常特性について噴流進行方向に焦点を当て,流動特性に及ぼす各種パラメーターの影響を調べていく.研究期間内で着目する現象を支配する無次元パラメーターの特定や相似則に関する議論を目指す. ところで,一次噴流の進行方向を二次流れで制御するということは2種類の流れの干渉問題であり,本課題は噴流干渉下でのコアンダ効果の解明と捉えることもできる.特に二次流れがシンセティックジェットの場合には,本来,速度変動を伴わない一次噴流においても速度せん断層の巻き上がりタイミングが二次噴流の周波数により決定されてしまうため実質的に脈動噴流と類似の流動特性を有することになる.一方,コアンダ効果に関しては,接線方向吹き出し円柱周りの流れと関連していると考えられる.これらのことから,今後は2019年度の研究を継続するとともに,脈動噴流や接線方向吹き出し円柱の基本流動特性との関連についても議論を展開予定である. 得られた成果については随時,ジャーナルや国際会議などで発表予定である.
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