研究課題/領域番号 |
18K03938
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
清水 大 福井工業大学, 工学部, 教授 (40448048)
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研究分担者 |
杉本 信正 関西大学, システム理工学部, 教授 (20116049)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱音響自励振動 / ヘルムホルツ共鳴器 / 局所接続 / 対称性 / 2次高調波 / エネルギーカスケード |
研究実績の概要 |
大型共鳴器の局所接続により,熱音響自励振動の大振幅化が可能であることを実験により明らかにした.令和元年度は,平成30年度に構築を進めた定在波型熱音響エンジンにおいて実験を行った.共鳴器を管中央付近の周方向に局所接続することにより,自励振動に含まれる特定の振動モード,とりわけ2次振動モードの発生が顕著に抑制され,熱音響自励振動の大振幅化が可能であることが分かった.局所接続による特定の振動モードの顕著な抑制が,より高次な振動モードへのエネルギーカスケードを抑制することにより,基本振動の振幅そのものを増幅できることが分かった.局所接続では,周方向に共鳴器を接続するため,接続できる共鳴器の数は物理的に限られる.本実験では,実験装置の全長を短くすることで共鳴器を相対的に大型化することにより,限られた接続数でも基本振動の増幅が可能であることを明らかにした.また,装置の全長を更に短くすることで共鳴器の更なる大型化を図り,共鳴器の固有振動数が自励振動の2次高調波の周波数により近い実験も行った.この場合,局所接続による自励振動の大振幅化は同様に可能であるが,増幅率の最大値はむしろ低下することが分かった.このことから,共鳴器の固有振動数を自励振動の2次高調波の周波数に一致させることは,一致させない場合と比べ,大振幅化に有効でないことが分かった.これらの定在波型熱音響エンジンにおける実験と並行して,平成30年度に作成した共鳴器の局所接続を可能とする装置一式をもう一組作成し,共鳴器の局所接続が可能な進行波型熱音響エンジンの構築を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大型共鳴器の局所接続により,熱音響自励振動を大振幅化できることを明らかにするため,令和元年度は,まず,全長1.6 mの定在波型熱音響エンジンにおいて実験を行った.管中央付近に共鳴器を局所接続することにより,自励振動に含まれる特定の振動モード,とりわけ2次振動モードの発生が顕著に抑制され,自励振動の大振幅化が可能であることを明らかにした.また,2次振動モードの発生が抑制されたことにより,より高次な振動モードへのエネルギーカスケードが抑制され,基本振動の振幅そのものを増幅できることが分かった.装置の全長を更に短い1.4 mにすることにより,共鳴器の固有振動数を自励振動の2次高調波の振動数により近づけた実験では,共鳴器を取り付けない場合と比べた超過圧の増幅率の最大値がむしろ低下することが分かった.いずれの実験においても,局所接続を可能とする装置の位置を管中央付近で2 cmだけ僅かに変更する実験も行った.基本振動の超過圧の節から僅かにずれる位置では,共鳴器の局所接続数を増やすにつれ,増幅率は増大するが,接続数8個程度で最大となることが分かった.共鳴器の局所接続数を更に増やすと,基本振動に対する僅かな減衰効果が無視できなくなり,増幅率が減少に転じることが分かった.一方,基本振動の超過圧の節により一致する位置において共鳴器の局所接続数を増加させると,増幅率は減少することなく,一定の値に飽和することが分かった.増幅率の最大値そのものは,全長1.6 mの実験装置では,局所接続する位置の僅かな違いに余り依存することなく,どちらの場合も30%程度の増幅率となることが分かった.一方,全長1.4 mの実験装置では,取り付け位置の僅かな違いが増幅率の最大値に大きく影響し,基本振動の超過圧の節により一致する位置では20%程度,僅かにずれる位置では,10%程度の増幅率となることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
進行波型熱音響エンジンにおいて,共鳴器を局所接続することにより,自励振動の大振幅化が達成されるか否かを実験により明らかにする.進行波型においても,管内の空隙率や温度分布は定在波型と同様に非一様であることから,発生する自励振動には必然的に定在波成分が含まれる.この定在波成分に着目し,ループ管の対称な位置2カ所に共鳴器の局所接続を可能とする装置1対を挿入して実験を進める.これにより,定在波成分の発生および高次振動モードへのエネルギーカスケードを抑制し,自励振動の大振幅化を試みる.ループ管は複数の曲管と直管により構成し,スタックと両熱交換器で構成されるエンジン部についても,定在波型エンジンと同じエンジン部1対をループ管の対称な位置に配置する.曲管は,金型を用いた高精度な加工がコスト面から困難であることから,曲げ加工により直管から製作した4つの曲管を使用する.このため,共鳴器の局所接続を可能とする装置の任意な位置への挿入については,曲管の細分化ではなく,直管部におけるエンジン部の挿入位置を調整することにより実施する.しかしながら,エンジン部の挿入位置の調整は,共鳴器の局所接続とは無関係に自励振動の振幅そのものに影響を与えることが予想されるため,共鳴器を接続しない場合の振幅と比較した増幅率に着目して実験を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
現地開催の中止された学会があり,当初見込みと執行額はわずかに異なった.新型コロナウイルス感染症の拡大次第ではあるが,今のところ,研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め,当初の予定通り計画を進めていく.
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