研究課題/領域番号 |
18K03940
|
研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
秦 隆志 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 教授 (00342577)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ウルトラファインバブル / ナノバブル / コンタミネーション / ソノルミネッセンス / 超音波 |
研究実績の概要 |
流体工学分野の混相流を筆頭に、多くの学術分野や産業分野においてファインバブル(微細気泡)研究が進んでいる。しかしながら、ファインバブルの内、特に1μm未満で定義されるウルトラファインバブル(ナノバブル)については、その微小性から評価が困難であり、粒度分布測定から得られるデータをそのままウルトラファインバブルとすることは不純物の混在(コンタミネーション)も検討されることから難しい。本研究の目的は不純物混在下においてもウルトラファインバブルを定性的・定量的に評価できる計測法の確立を目指して、超音波照射によって生じるソノルミネッセンス(発光現象)を用いた新たな計測法について研究をおこなう。 研究概要としては、【① 純水中でのウルトラファインバブルの評価(1年目)】、【② 不純物の影響(2年目)】、【③ 不純物が混在したウルトラファインバブルの評価(3年目)】、および【④ ウルトラファインバブルの消泡の検討(1~2年目)】とした。 当該年度の研究実績としては上記の③が該当し、固体ナノ粒子としてポリスチレンラテックスを、イオン成分としてNaCl等のイオン類を、油脂の代用として食用油であるオレイン酸をそれぞれ不純物として混在させたウルトラファインバブル水を作製し、ソノルミネッセンス観察をおこなった。結果、固体ナノ粒子および食用油をそれぞれ混在させた系では、それらの有無によるソノルミネッセンス強度に差はなく、ウルトラファインバブルの有無にのみ強度差が生じた。他方、NaCl等のイオン類混在下では全体的にソノルミネッセンス強度が上昇した。そこでウルトラファインバブルの崩壊に関与すると考えられるヒドロキシルラジカル(OHラジカル)の波長領域を通過させるバンドパスフィルタを用いることでバブルの崩壊分のみを選択的に識別し、定性・定量評価をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【① 純水中でのウルトラファインバブルの評価(1年目)】純水中でのウルトラファインバブルに対するソノルミネッセンス測定をおこなった。コントロール水(溶存ガス量は同じに調整)ではウルトラファインバブル水と同様なソノルミネッセンス挙動は確認されず、この挙動はウルトラファインバブルがキーになっていること(定性)、またその強度はウルトラファインバブルの数密度に依存すること(定量)を確認した。 【② 不純物の影響(2年目)】固体ナノ粒子:ポリスチレンラテックス、イオン成分:NaCl、油脂の代用:食用油(オレイン酸)を分散させた不純物系を作製しソノルミネッセンス測定をおこなった。結果、イオン類混在下でのみ、ソノルミネッセンス強度の全体的な上昇が確認された。 【③ 不純物が混在したウルトラファインバブルの評価(3年目)】固体ナノ粒子および食用油をそれぞれ混在させた系では、それらの有無によるソノルミネッセンス強度に差はなく、ウルトラファインバブルの有無にのみ強度差が生じた。他方、NaCl等のイオン類混在下ではソノルミネッセンス強度が全体的に上昇したことからウルトラファインバブルの崩壊に関与すると考えられるOHラジカルの波長領域を通過させるバンドパスフィルタを用い、バブルの崩壊分のみを選択的に識別した。 【④ ウルトラファインバブルの消泡の検討(1~2年目)】凍結溶解によりウルトラファインバブルは消泡するものの、固体ナノ粒子も凝集して同様に分散量が減衰することを確認した。現状では超音波、それも高周波においての消泡効果が高いことを確認した。 以上の結果からソノルミネッセンスを指標とすることで不純物混在下でもウルトラファインバブルのみを定性的・定量的に識別できる可能性を得た。 なお、最終3年度に開催予定であった国際会議がコロナ禍の影響で延期になり、1年間の延長(計4年間)をおこなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画では3年間の実施計画であったが、当該年度に開催予定であった国際会議がコロナ禍の影響で延期されたことにより1年間の期間延長をおこなった。そのため、次年度では予定していた当該国際会議での研究成果発表をおこなうこと、および関係する追加データの取得をおこなう。 さらに本研究ではソノルミネッセンスを観測するためにイメージインテンシファイア(映像増強管)を用いているが、これらの構成は高額であるため、安価なフォトンカウンティングユニットを用いた汎用的構成にて一般的な普及に関する検討をおこなう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究成果発表予定であった当該年度の国際会議がコロナ禍のため次年度へと延長になったことによる。 (使用計画)研究期間を延長し、次年度開催予定の国際会議への旅費・参加費、並びに発表に関する追加データ取得の消耗品費として使用予定である。
|