各種水力機械の構成要素である水管の損傷抑制という研究背景に対して、水中における衝撃波を、音響的なソリトン(縦波)に変換することが本研究の目的であった。そのために、キャビテーションの中でも「弱い」非線形効果の活用に着目し、キャビテーション気泡の振動に起因する波の分散効果を発現させて、非線形効果と分散効果をつりあわせ、ソリトンを形成させることを着想した。一方、非線形効果が散逸効果とつりあうときに衝撃波が形成されることを思い返せば、非線形・散逸・分散の三効果の定量評価が、上記目的の達成のためのポイントとなる。 そこで、これら三効果を表す三項の線形和から表現される数理モデル「非線形波動方程式」に着目し、多様な非線形波動方程式を構築した。結果、上記三効果の定量評価を経て、圧力波の発展波形の予測を行った点が主要な成果である。成果はそれに留まらず、非線形波動方程式を導くための根源となる気泡流の平均化モデル方程式の構築と深化、水に限らず粘弾性液体への媒質の拡張、水管に限らず医療応用用途の管への拡張等にも発展できた。次なるステージとして、得られた基盤成果の実用化と技術開発を目指すが、当該構想を含む成果は、ターボ機械協会からの2賞、およびわかしゃち奨励賞の受賞によって既に一定の評価が得られている。 基礎研究に関する研究成果は、査読付学術雑誌論文28編の形で出版済であり、国内外に広く周知することができた。以上を含む成果に対して、代表者は、5学会(日本機械学会、日本流体力学会、日本混相流学会、日本音響学会、ターボ機械協会)から奨励賞・若手賞を計6賞受賞、筑波大学BEST FACULTY MEMBER (SS教員(研究部門))に選出され、文部科学大臣表彰若手科学者賞に結実するなど、高い客観評価を受けている。
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