研究課題/領域番号 |
18K03946
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山口 浩樹 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50432240)
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研究分担者 |
松田 佑 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (20402513)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高クヌッセン数流れ / 適応係数 / 散乱分布 |
研究実績の概要 |
マイクロ熱流動場ではクヌッセン数が大きくなるため,固体表面における境界条件が大きく影響する.しかし,実在の表面に対する境界条件を高精度に表現することは容易ではない.この境界条件とは分子の固体表面における散乱過程のことであり,代表的なパラメータとして分子の固体表面への平均的な適応割合を示す適応係数が知られており,熱輸送に関するエネルギー適応係数(EAC)や流動抵抗に関する接線方向運動量適応係数(TMAC)が実験的に計測されている.そこで,散乱過程に対する異なる統計平均量であるこれら二つの適応係数を同じ固体表面試料に対して比較解析することで,高クヌッセン数となるマイクロ熱流動場における実在表面に対する境界条件を提案することを目指す. 本年度は,TMACに対する2つの計測システムとEACに対する計測システムの構築と検証を実施した.まずは,金属細線周りの外部流れを用いてTMACを計測する同心二重円管の計測システムでは,微細金属線を用いても流量変化が十分計測できることを確認した.一方で一部の実験結果が理論値と一致しないことから,実験装置の改良の必要性が明らかとなった.もう一方は,粘性真空計を参考にした平行円盤の回転を用いたTMACの計測システムであり,定量的にも既存の結果と矛盾しないことを確認した.更なる検証が今後求められる.EACの計測システムとしては大気圧に近い領域で計測可能な金属細線からの熱流束を計測するシステムの構築を行った.温度を一定にした状態での熱流束の計測からEACを導出できることを確認できたので,今後は高真空状態での計測が既存の知見と一致することを検証していく. また,実験結果と境界条件モデルに用いるパラメータセットとの関係を詳しく調査し,その関係性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,同じ固体表面試料に対して二つの適応係数を計測して比較できるようにするための計測システムの構築を,それぞれ2種類のアプローチにより行った.新しく構築した計測システムの検証も進んでおり,さらなる改良により計測結果の精度の改善が期待できる. 境界条件モデルに関しては,既存の結果を整理することにより,パラメーターセットと得られる統計平均量であるEACやTMACとの関係を明らかにした.この結果を用いることにより,実験的な計測結果を用いて高精度な境界条件のパラメーターセットを提案することが可能になると期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は計測システムの検証を進め,その後TMAC及びEACの計測を行う.特にクヌッセン数に依存する流れ領域の違いによる影響を詳しく実験的に調査する.得られた結果から境界条件モデルのパラメーターセットを導出するとともに,境界条件モデルの改良についても検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初3年目に計画していた学術論文の投稿を2年目に実施したため,そのオープンアクセス料を前倒し請求を行ったが,予想額と支払額に差額が生じたため.
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