研究課題/領域番号 |
18K03948
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷垣 実 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (90314294)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウルトラファインバブル / 内部圧力 / 摂動角相関 |
研究実績の概要 |
昨年度はウルトラファインバブル中のI-125について摂動角相関について成功し、決定したγ-γ角相関係数からウルトラファインバブル中の内部圧力の暫定的な値を求めた。本年度は、まずこの測定データの解析を継続した。昨年度のXe飽和水溶液とウルトラファインバブル水の摂動角相関の測定データから試料ごとのγ-γ角相関の計数を詳細に評価して、水溶液として溶存するI-125とウルトラファインバブル中に存在するI-125の存在比を決定した。この存在比による補正を加えた上で再度ウルトラファインバブル中のI-125のγ-γ角相関係数を決定し、そこから内部圧力を(3.4+3.3-2.3)x 10^5 Paと決定した。これはヤングラプラス方程式から予想される値の数分の1であり、内圧と外圧および表面張力が平衡であると考える場合、なんらかの圧力補償機構の存在が強く示唆される結果である。 また、昨年度の摂動角相関測定ではCdZnTe検出器の角度を変えながら角度依存性を測ることにしているが、この角度設定が手動で測定効率と角度再現性が悪かった。そのため、角度設定の自動化システムの構築とその制御ソフトを開発した。現在は角度設定のみが自動であるが、引き続き開発を継続し試料設定後の測定自体を完全自動化する計画である。 ウルトラファインバブルの内圧は外圧及表面張力等と釣り合っていることから、外圧を変化させることで発生する内部圧力の変化やその値を知ることで圧力補償機構の解明の手がかりが得られると考えられる。そこでXeガスで加圧した状態のウルトラファインバブル水について摂動角相関測定を試みた。この結果は現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度からの装置開発も順調で、測定の効率化も進んでいる。また各種測定についても原子炉のマシンタイムなどのかねあいはあるものの概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進展していることから、測定装置の開発を継続して測定効率を上げるとともに、ウルトラファインバブル水の外圧変化による内部状態の変化を捉え、初年度の測定で明らかになった低い内部圧力の原因を探る。本研究で使用する角相関測定はウルトラファインバブル中の気体を中性子照射で放射化し、生成された核種に特徴的なγ線を観測する。そのため、従来のウルトラファインバブルの確認手法の困難の理由の一つであったバブルとゴミとの判別の問題が原理的に存在せず、例えばウルトラファインバブルの存在量を高い信頼性で押さえられる可能性が明らかになった。そこで、本年度は放射化によるウルトラファインバブルの寿命測定の可能性を検討する。また、当初計画にあったウルトラファインバブルと物質との相互作用をとらえるため、摂動角相関可能な核種を物質表面に集中させたものとウルトラファインバブル水を作用させ、その際の相互作用を摂動角相関で捉えられないかを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウルトラファインバブル水生成に使うXeガスなどの消耗品や各種部品などについて、他の実験で余ったものなどを流用することができたため、当初想定より安価に済ませることができたため。
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