研究課題/領域番号 |
18K03949
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
土井 俊行 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (00227688)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 希薄気体流 / 表面物性 / 相反関係 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、非一様な分子反射側(表面物性)を持つ同心円筒間における希薄気体の流れを集中的に研究した。この系で、次の3つの流れを総合的に調べた:(問題A) 外円筒の回転による気体のせん断運動、(問題B) 円筒間の温度差による熱伝達、(問題C)静止した2円筒の表面温度分布により引き起こされる希薄気体特有の流れ(熱ほふく流)。この目的のため、研究代表者が2017年度までに開発していた平行平板間でのボルツマン方程式の数値解析プログラムを応用し、同心円筒系に適用できるスキームを開発した。主要な研究結果は次の通りである。 問題Aにおいて、円筒の低速回転により、円筒と気体の間に局所的な熱輸送が現れた。これは、希薄気体で壁面の表面物性が非一様な場合に起きる非自明な希薄化効果である。ところが、熱輸送を円筒全体にわたって積分したもの(2円筒間の正味の熱伝達)は、気体の希薄度、2円筒の半径比、および適応係数の分布を特徴づけるパラメータの全範囲でゼロになるという普遍的性質が成り立つことが、数値計算の結果明らかになった。 問題Bにおいて、(静止した)2円筒の温度差により、円筒の表面は局所的に気体からせん断応力を受けることが示された。このせん断応力もまた、非自明な希薄気体特有の効果である。しかしながら、このせん断応力を円筒表面全体にわたって積分した結果、内円筒に働くトルクは、上述のパラメータの全範囲でゼロになるということが数値的に明らかにされた。すなわち、問題AとBの間に、著しい類似性が見られることが示された。 問題Cの特徴は、この状況において、内円筒に働く全トルクと、2円筒間の正味の熱伝達はゼロにならないことである。このことは、問題Aと問題C、および問題Bと問題Cという一見無関係な流れの間に普遍的に成り立つ相反関係が縮退せずに現れることを意味する。 以上の結果を論文にまとめて投稿し受理された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、2017年度から着手していたためと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
壁面での表面物性の非一様性が希薄気体流におよぼす影響として、気体分子の平均自由行程が大きい場合(高度に希薄な気体)における、速度分布関数の特異性の問題がある。これは、高度に希薄な領域におけるボルツマン方程式の数値解析に困難をもたらす。解決策の候補として、平均自由行程が大きいことを利用した逐次近似解法が考えられる。逐次近似解法は、壁面が一様な拡散反射境界でできた場合に対して開発されたものであるが、それを非一様な表面物性の問題に拡張できるかがポイントである。この問題について、現在予備的検討を進行中である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
最後の残高が少額であったため、次年度予算と合算のうえ物品購入することとしたため。
|