誘引物質の種類による単毛性細菌の集まりやすさの違い 異なる誘引物質における単毛性細菌Vibrio alginolyticus YM4の集積度合を比較した.誘引物質にはセリン,グリシン,アラニン,ロイシンを用いた.濃度を変えた水溶液に0.3%寒天を添加したものを毛細管に充填し,細菌懸濁液に挿入した.そして,毛細管先端周辺に集積する細菌の数と分布を調べた. いずれも濃度0.1Mでは毛細管周辺への細菌の集積が見られたが,集積の速さが異なる.グリシン,アラニン,ロイシンでは50分経過時に初期細菌数の2倍程度集積するのに対して,セリンでは4分で初期細菌数の5倍まで集積する.すなわち,グリシン,アラニン,ロイシンに比べセリンに対しては短時間で集積していた. グリシン,ロイシン,アラニンのいずれも,0.01Mでは経過時間によらず菌体数が変化する様子は見られなかった. セリン0.1Mにおいて,細菌の集積する範囲(時間が経過したときに細菌密度が増加してく範囲)は半径120-130μm程度であり,グリシン,アラニン,ロイシンの90-100μm程度に比べ広い範囲となっているものと見積もられた. また,このような集まり方の差異の原因となるはずの細菌単体の遊泳運動にどのような差があるかを調査した.細菌単体を長時間(数分程度)観察したが,遊泳軌跡に目立った差は見られなかった.誘引物質に近づく時の遊泳継続時間が長くなる傾向が,セリンでは見られたが,上記の集積速度の差異を説明できるほど顕著ではなく,他に走化性の差異の要因があるものと考えられる.
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