本研究では,外部からの壁面温度操作による内部流れの応答を明らかにし,熱対流ロール対による流路抵抗の低減および,水平力の発生(水平流の駆動)の定量的評価から,新しい流れの制御手法の確立を目指した実験研究である.この手法は,従来手法のような表面の微細加工や流路内デバイスを必要としない優れた利点・特徴をもつ. まず,水平チャネルの片面(滑面)に対して周期加熱を適用した場合について調べたところ,浮力による定在ロール対が生成された.これに水平流を与えると,流れはロールの間を縫うように蛇行し,ロールは流れを後押しするように回転した.この結果,最大約10%の流路抵抗低減が実現されることが示された. 次に,緩やかな表面形状変化と組合せた場合について調べた.両端を開放した水平チャネルの片面に,チャネル幅のわずか5%の振幅の波打ち(波長はチャネル幅の約3倍と緩やか)と周期加熱を適用した.両者の間に90°の位相差を与えると,壁面の微小な凹凸(波打ち)によってわずかに傾いた定在対流ロールが生成され,水平非対称な密度勾配によって,水平流れが駆動された.駆動流量は加熱強さとともに単調に増加するとともに,流れの向きは加熱の位相の入れ替えによって制御できることが実証された. また,3次元流路に対する本制御手法の適用可能性について,チャネル幅を変化させて調べた結果,流路のアスペクト比が1程度の矩形流路においても水平流が駆動されるという,円管(パイプ)のような工学的により重要な流れの制御に対する有益な知見を得ることができた.
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