台風など熱帯低気圧下における高速気流場の海表面近傍は,液滴の飛散や気泡の巻き込みなどの激しい砕波を伴う複雑な気液二相乱流場を呈し,特に海表面は,気泡同士が連続的にくっついて層を成す,いわゆる気泡層に完全に覆われることが報告されている.そこで本研究では,高速気流による超高密度気泡層の生成機構・気泡層を通しての運動量輸送機構を解明することを目的とする.2020年度は主に,(1)九州大学応用力学研究所の大型風波水槽および近畿大学風波水槽にて測定された高速気流および波高データ解析を行い,運動量収支法およびプロファイル法を用い,高速気流により発生した気泡層を通しての運動量輸送量の推定を行った.その結果,高速気流によって運動量輸送量の増加が抑制される傾向を確認した.(2)小型風波水槽にて,界面活性剤を使用し界面に人工的な気泡層を生成させた場合における気泡層界面を通しての運動量輸送現象の検討を行った.その結果,気泡層が存在することにより気液界面を通しての運動量輸送が抑制されることを観察した.(3)気泡層とは異なるものの,気泡層と同様に高速気流による気液間運動量輸送に関わる現象として,気液界面を通しての運動量輸送量に及ぼす境界層外乱流および液流の影響に関して検証も行った.これらの研究実績の一部は,査読付き英文誌2報に掲載された.また,1報を執筆中である.成果報告を予定していた一部の国際会議は新型コロナウィルス感染症(COVID19)の影響により中止となったものの,国際会議を含む7件において成果発表がされた.
|