研究課題/領域番号 |
18K03954
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
小野 直樹 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20407224)
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研究分担者 |
丹下 学 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (70549584)
山田 崇 芝浦工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (90791947) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マランゴニ効果 / マイクロ混合 / スラグ流 / PIV / マイクロ流路 / 物質移動 |
研究実績の概要 |
本研究は,ミニチャンネルを利用して形成されるスラグ流内部にマランゴニ対流を発生させる機構により,小体積ながら簡便かつ高速の革新的液体混合デバイスを実現することを目的としている.スラグ流内にて瞬間的に発生するマランゴニ対流を利用する混合機構の妥当性や特性,適用限界容積について検証し,実用的なデバイスへの応用に必要とされる条件,関係性などの包括的設計指針を確立する. 平成30年度での研究から,代表長さ0.1 mmから0.5 mmとサイズを大きくした三種の流路を用いた実験により,全てにおいてスラグ流内部の試験流体は,スラグが生成された地点から3mm下流に移動するまでに,ほぼ完全に混合が完了した.しかし代表長さ0.5 mm(流路深さも0.5 mm)の場合,流路平面方向に加えて流路深さ方向にも流れのある三次元流れであることが分かった.流路サイズの拡大は混合処理能力の向上につながり実用上重要であり,それは三次元流の発生を伴う.よってスラグ流内部の混合を促進させるためにはまずその三次元対流を理解することが不可欠と考えた. 平成31年度は,三次元観察をするために二台のカメラを用いるステレオPIVの準備を進めた.一般のサイズ(cmオーダー)と異なり,マイクロ流路のような1 mm以下のサイズの領域のステレオPIV技術は前例がほとんどなく,独自に構築を進めた.その結果,二台のカメラの焦点および精度校正のために必要な校正板がまず必要であることが分かった.一般のサイズの校正板(市販品あり)と異なり,微小な構造をもつものが必要であり,研究室で自作することができた. 令和2年度は,この校正板も含めて構築した光学系を用いて,代表長さ0.5 mmの流路を用いたスラグ流内のマランゴニ対流を観察して,混合促進のための条件や流路形状の提案に向かっていく予定である.以上
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成31年度は,三次元観察をするために二台のカメラを用いるステレオPIVの準備を進めた.この際,大きく二つの技術的課題があった. 一つ目はステレオPIVではカメラを二つ用いて,それぞれ斜めから対象面を観察するため,カメラ内の撮像素子と対象面の間のレンズを傾けて設定する必要があることである.これについてはシャインプルーフの原理をもちいて,適切なアダプター(シャインフラグアダプター)を導入して設置することで解決できた. 二つ目は,カメラの焦点およびあとでPIVの解析ソフトにデータを渡すときに重要となる画像の精度と倍率を調整するための校正板の問題である.一般のサイズ(cmからm)の対象物を撮影するのであれば,市販されている校正板が利用できるが,ここでは数十~数百μmのサイズを対象物とするため,市販のものは利用不可能であった.結局研究室内のフォトエッチング装置を用いて自作し,妥当なものを作成することに成功した. 一般のサイズと異なり,マイクロ流路のような1 mm以下のサイズの領域のステレオPIV技術は前例がほとんどなく,上記のように光学系と校正板を独自に開発して構築したために多くの時間を要した.しかしこれで三次元撮影のための準備はほぼ終了できたと考えている.以上
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,昨年度作成した光学系および校正板を用いて,以下の手順で研究を進める予定である. 1)三次元PIV技術の具体的検証:構築した技術を用いて,まず基礎的な三次元対流が観察でき,正しく画像解析できるかを検証する必要がある.撮影した画像は専用のPIV画像解析ソフトで処理でき,そのためのソフトの検証も進める(ソフト自体はすでに所有している). 2)代表長さ0.5 mmの流路を用いたスラグ流への適用:次に代表長さ0.5 mmの流路を用いたスラグ流への適用へと進める.まずは定置したスラグ(あるいはそれと似た状況の流動現象)を対象にステレオPIV観察を適用して,技術を確立する.撮影条件等が吟味できたあと,実際の動くスラグ流への適用を行う. 3)得られた三次元流の考察:三次元の流れは通常複雑であるため,生じている渦構造などを適切に理解する必要がある.ステレオPIVから得られる結果から,スラグ流内の流れを考察し,混合を促進するための条件の提案へつなげる.具体的には流路形状や流量,2液の接触形態などへの改善につなげる.以上
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次年度使用額が生じた理由 |
カメラの焦点およびあとでPIVの解析ソフトにデータを渡すときに重要となる画像の精度と倍率を調整するための校正板が必要となった.一般のサイズ(cmからm)の対象物を撮影するのであれば,市販されている校正板が利用できるが,ここでは数十~数百μmのサイズを対象物とするため,市販のものは利用不可能であった.結局研究室内のフォトエッチング装置を用いて自作し,妥当なものを作成することに成功した. 当初はこの微小サイズの校正板を外注にて作成しようと思っていたが,自作に挑戦したところ,自分の研究室できることがわかり,その外注用に考えていた物品費が余った.その分を令和2年度にまわし,次の実験装置の製作費や撮影に必要な治具類の作成用に充当する予定である.以上
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