研究課題/領域番号 |
18K03960
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
武内 秀樹 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (30435474)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 流体工学 / 希薄気体力学 / 分子動力学 / Gas-Surface Interaction / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究では,高Knudsen数流れの系での気体の熱的・流体力学的特性の正確な把握に必要な物体界面での気体分子散乱特性の解明に向けて,流れ場のさまざまな影響因子を考慮した気体分子散乱挙動の予測に有効な反射モデルの確立を機械学習によるアプローチから実施し,気体-ナノ構造界面における気体分子散乱特性に与える影響要因やその散乱メカニズムを基礎的レベルで解明し,統一的な知見を得ることを目指す. 昨年度までに,本研究で構築してきた機械学習に基づく気体分子散乱特性の分子速度分布関数の予測に対して,今年度は,流れ場の壁面速度比や壁面温度比を変化させた際の金固体表面上の原子的表面性状の違いを考慮に入れた単原子分子のアルゴン気体分子散乱の分子動力学解析データを基に,固体表面への入射・反射分子に対する各方向の分子速度分布関数の予測モデルの構築を行った.入射・反射分子に対する予測モデルによる接線方向分子速度分布関数を基に求めた接線方向運動量適応係数の値は,分子動力学解析から得られた接線方向運動量適応係数の値を概ねよく再現していることが確かめられた.二平板間の巨視的な速度勾配や温度勾配を有する高Knudsen数流れに対して,金原子の固体表面性状の違いを影響因子に取り入れた際でも構築した分子速度分布関数の予測モデルの有用性が確認された.また,予測モデルより求められる適応係数などの値から,固体表面のナノ構造の違いによる流れ場への影響が予測でき,機能性ナノ界面の探索に反映できる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,昨年度までに得られた知見をもとに,金固体表面に対する原子レベルでの表面性状の違いや巨視的な流れ場の条件の相違を気体分子反射特性の影響因子に取り入れることができ,それらの因子に対して,分子速度分布関数を予測するモデルの構築を機械学習により行った.また,分子動力学解析により得られるマクロな散乱特性である適応係数の値と比較することで,構築した速度分布関数の予測モデルの有用性が確かめられ,構築モデルの精度の影響を吟味することが可能となっており,本研究課題は,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,機械学習により構築した予測モデルに基づき,要求する散乱特性を生成する界面構造に対して適応係数等のマクロな物理量などから考慮・調査を行うとともに,モデルの予測精度向上に向けた分子動力学解析に基づく基礎的な散乱データの取得を継続しつつ,気体分子散乱挙動に影響する因子を包括的に議論し,気体分子散乱の核となる重要な素過程の理解について検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は,構築したモデルの予測精度向上に向けた分子動力学解析に基づく気体分子散乱取得データの保存を行うための消耗品などの購入および国内外での研究成果発表のための費用や論文投稿費用などに利用する計画である.
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