研究課題/領域番号 |
18K03963
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
松山 新吾 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (60392841)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | SGS応力輸送方程式 / LES / 平面乱流噴流 |
研究実績の概要 |
本研究では平面乱流噴流を対象として、申請者が過去に実施した研究(科研費基盤研究(C)15K05817、H27~29)で取得した Re = 3000~30000 の DNS データベースを活用しながら SGS 応力輸送方程式型の LES モデリングを実現することを目指す。 前年度、2018年度では、平面乱流噴流の DNS データを利用したアプリオリテストにより、SGS 応力の輸送方程式中に含まれる速度相関項や圧力・速度相関項についてモデリングを行った。その結果を受けて、本年度、2019年度では SGS 応力輸送方程式を LES に組み込み、安定な数値解法の構築を行った。 SGS 応力輸送方程式には移流・拡散・生成項が含まれ、通常、安定性に影響を及ぼすのは生成項のみであるが、Re = 10000 の平面乱流噴流について SGS 応力方程式モデルによる LES を実施した結果、生成項により安定性が低下する傾向はみられなかった。これは、LES の空間積分に風上バイアス型の補間スキームを使用していることも寄与しているとみられる。また、安定性を向上させる試みとして歪時間スケールを散逸項へ導入した。この散逸項は乱流強度が大きな個所では散逸が増え、小さな個所では散逸が減少する形式になっており、不安定の回避に寄与している。以上の取り組みにより、SGS 応力輸送方程式による LES の安定的な数値解法を構築することに成功した。 また、SGS 応力輸送方程式による LES モデリングに加えて、SGS モデルを使用しない陰的 LES(ILES)について格子解像度を変化させて系統的に解析を行い、格子スケールの乱流成分が不足した場合の解析結果の劣化について傾向を明らかにした。格子スケール乱流成分の寄与を明らかにしたことで、SGS 乱流成分の果たす役割を考察する上で有用な情報になるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画として挙げたとおり、SGS 応力輸送方程式を LES に組み込み、散逸項に歪時間スケールを導入することで安定な数値解法を構築することが出来た。また、ILES について格子スケールの乱流成分が不足した場合の解析結果の劣化について傾向を明らかにすることが出来た。得られた知見は SGS 乱流成分が果たす役割を考察する上で有用な情報になるものと期待される。 以上の成果から、本年度は目標を計画通りに全て達成し、研究は順調に進捗しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度、2020年度では、前年度までに構築した SGS 応力輸送方程式とその数値解法を組み込んだ LES について解析精度の検証を行う。Re = 10000 を中心として、Re = 3000~30000 までの平面乱流噴流に対する LES を実施して DNS データベースとの比較により解析精度の評価を行う。評価の指標として、平均速度場・RMS 変動場といった統計量について Re 数に対する依存性が正しく再現できるかに注目する。また、格子解像度を変化させて、いずれの格子解像度でも精度の良い解が得られることを検証し、SGS 応力方程式型 LES モデリングを確立する。さらに、検証の過程で必要に応じて SGS 応力方程式の速度相関項、圧力・速度相関項や散逸項について、モデルの改良やパラメータチューニングなどを実施し、解析精度の向上を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学術論文の執筆が年度内に完了しなかったため、英文校閲を実施できなかった。次年度、論文の執筆が完了次第、英文校閲を実施する予定である。
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