研究課題/領域番号 |
18K03964
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松下 洋介 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80431534)
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研究分担者 |
青木 秀之 東北大学, 工学研究科, 教授 (40241533)
齋藤 泰洋 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50621033)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 予混合火炎 / 拡散火炎 / Flamelet / FPV / FGM / Large Eddy Simulation / 乱流シュミット数 / 有限体積法 |
研究実績の概要 |
Large Eddy Simulation (LES)における乱流シュミット数を決定するため,当初の研究計画どおり,Sandia Propane Jetと呼ばれる化学反応は起こらず,混合のみが生じるプロパンと空気の同軸二重噴流を対象に乱流混合のLESを実施した.なお,シミュレーションには非構造格子の有限体積法に基づくin-houseのコードを用い,領域分割に基づくMPIによる並列計算を実施した.その結果,混合分率が噴流の減衰とともに半径方向に拡散する様子を表現した.また,混合分率の時間平均値は実験結果とほぼ完全に一致した.そのため,使用したモデル,解法および計算コードが妥当であることを確認した.一方,混合分率のRMSは噴流の上流側で実験値を過大に,下流側で実験値を若干過小に見積もった.上流で過大評価したのは流入境界に与えた乱流変動が実験よりも大きかったためであると考える.下流で若干過小評価したのは下流における計算格子数が必ずしも十分ではなく,乱流エネルギーの散逸をやや過大に見積もったためであると考える.乱流シュミット数を0.3-0.7と変化させて計算を実施したものの,解析結果に大きな違いは生じなかった.これは,LESではRANSとは異なり流れや混合に影響を及ぼす大きな渦を直接解く,すなわち,モデル化される渦が少ないためであると考える.また,Sandia Propane Jetと同じく乱流混合が生じるものの作動流体が水であるJohnson and Bennettの実験を対象に同様に乱流混合のLESを実施した.その結果,作動流体が全く異なるものの,Sandia Propane Jetと同じ事実や傾向が求められたため,これまで述べた内容には一定の普遍性があると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究ではFlamelet approachに基づき,予混合燃焼と拡散燃焼をシームレスにモデル化した燃焼シミュレーションを実現することを目標としている.その研究計画は1年目の「Large Eddy Simulationにおける乱流シュミット数の決定」,2年目の「FPVおよびFGMによるFlameletテーブルの構築」および3年目の「複合Flameletモデルによる部分予混合火炎を対象とした乱流燃焼のLES」からなる.1年目は早期に研究計画に沿って目標を達成することができたため,研究計画には入れていなかったが対向流拡散火炎を対象に実験結果や詳細化学反応機構の数値解に対して一次元の予混合火炎からFlameletテーブルを作成するFPVと一次元の対向流拡散火炎からFlameletテーブルを作成するFGMの数値解を比較することで,FPVとFGMの特徴を検討した.その結果,FPVはFGMと比較してCOの生成を過大に評価することがわかった.これは予混合火炎からFlameletテーブルを作成するFGMでは反応後期により化学平衡に近いデータが含まれているためであると考える.さらに,前倒しで一部2年目と3年目の研計画に取り組んでいる.以上より,本研究は当初の研究計画以上に早く,極めて順調に進んでいていると考える.また,8月には燃焼の分野で最も権威のある国際燃焼学会に参加し,燃焼シミュレーションを中心とする最新の研究動向を把握するとともに各国の著名な研究者と情報交換することができた.さらに,この機会を利用して英国Loughborough UniversityのProf. Malalasekeraを訪問し,本研究計画を説明し,研究の進め方について多くのアドバイスをいただいた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度も研究計画にしたがい,去年度の層流燃焼の知見を乱流燃焼に拡張するため,部分予混合の乱流燃焼で最も有名なSandia Flame C-Fを対象に,一次元対向流拡散火炎および一次元予混合火炎を用いて詳細化学反応における化学種の濃度や温度などの重要な情報を正確に表現しうるFlamelet/Progress Variable (FPV)におけるProgress Variable (PV)とFlamelet Generated Manifolds (FGM)におけるControl Variable (CV)を検討するとともに,FPVとFGMのFlameletテーブルを構築する.さらに,複合Flameletモデルを構築するためにPVとCVに共通なパラメータを決定する.また,Sandia Flame C-Fを対象に古典的なFlameletおよび拡散火炎を対象とした最新の燃焼モデルであるFPVのみおよびFGMのみのFlameletテーブルも構築し,これらを比較することで,FPVおよびFGMのFlameletテーブルの表現しうる範囲を明確にし,FPVおよびFGMそれぞれの特徴を明示する.Flameletテーブルの作成は去年度研究計画を前倒しすることで一部実施済みであるため,今年度も研究計画を前倒しできる可能性がある.その場合,当初,混合分率とPVあるいはCVの分散にはbeta-PDFを適用する予定であったが,この場合Flameletテーブルが四次元と膨大になってしまう.近年,混合分率とPVあるいはCVの分散にTop-hat関数を仮定する方法が提案されており,必要に応じてFlamletテーブルの次元を減らすことでFlameletテーブルの容量の削減も試みる.さらに、最終年度の研究計画のうち,複合Flameletモデルの具現化に取りかかる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では,ワークステーションを用いてシミュレーションを実施する予定であったが,本学サイバーサイエンスセンターの並列コンピュータを用いた方が研究を効率よく遂行できると考え,この並列コンピュータを用いることとした.また,予想以上に旅費が生じたこともあり,設備備品費として計上していたワークステーションの購入を見送ったため,「次年度使用額(B-A)」が生じた.なお,次年度に実施するFlameletテーブルの作成には並列コンピュータよりもむしろワークステーションの方が使い勝手いいため,次年度は予定どおりワークステーションを購入させていただく予定である.
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