研究課題/領域番号 |
18K03965
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
赤松 正人 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (40315320)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノフルード / 自然対流熱伝達 / 強制対流熱伝達 / 熱物性 |
研究実績の概要 |
2019年度は,「上面一定温度冷却,下面一定温度加熱された竪型円筒容器内のAl2O3-水ナノフルードの自然対流熱伝達」に関する研究から,ナノフルードは熱伝導率の小さいベースフルードにナノサイズの粒子を分散させることで有効熱伝導率を向上させ,熱伝達の促進を図る目的のために提案された革新的な熱伝達流体であった.しかしながら,本研究の範囲内においては,ベースフルードの水による自然対流熱伝達と比較して,Al2O3-水ナノフルードによる自然対流熱伝達の熱伝達促進はまったく見出せず,反対に.Al2O3ナノ粒子分散による自然対流熱伝達の熱伝達抑制が明らかとなった. また,「Rayleigh-Benard条件下における上面一定温度冷却,下面一定温度加熱された薄い竪型密閉円筒容器内で誘起されるAl2O3-水ナノフルードの自然対流熱伝達」に関する研究から,Al2O3-水ナノフルードのRayleigh-Benard対流の自然対流熱伝達は水のRayleigh-Benard対流の自然対流熱伝達よりも,やはり,自然対流熱伝達が抑制されることが明らかとなった.なお,本研究で特筆されることは,Al2O3-水ナノフルードの平均ヌッセルト数を水の熱物性値で定義したレーリー数を用いて評価するとそれらはシルベストンの平均ヌッセルト数曲線と差異が生じるが,Al2O3-水ナノフルードの熱物性値で定義したレーリー数を用いて評価すると,それらはシルベストンの平均ヌッセルト数曲線上に分布することがわかったことである. さらに,「水平円管内におけるAl2O3-水ナノフルードの層流強制対流熱伝達」に関する研究から,Al2O3-水ナノフルードと水の平均ヌッセルト数比は体積分率の増加とともに減少し,体積分率が同じとき,Al2O3-水ナノフルードと水の平均ヌッセルト数比はAl2O3-水ナノフルードに分散しているAl2O3粒子直径が小さいほど小さくなることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値解析と実験の両面から,Al2O3-水ナノフルードの自然対流熱伝達特性と強制対流熱伝達特性を明らかにするための研究を精力的に進めている. これまで,異なる参照温度とレーリー数下で,Al2O3ナノ粒子の体積分率の増加およびAl2O3ナノ粒子径の減少とともにAl2O3ー水ナノフルードの自然対流熱伝達は水の自然対流熱伝達よりも抑制されることを明らかにした.熱物性的観点から考えると,まず,Al2O3ナノ粒子をベース流体の水に分散させることにより,Al2O3ー水ナノフルードの有効熱伝導率は水の熱伝導率よりも,たしかに増加することがわかった.同様に,Al2O3ー水ナノフルードの有効動粘度も水の動粘度よりも増加することもわかった.一方,Al2O3ー水ナノフルードの有効体膨張係数は水の体膨張係数よりも減少することがわかった.このAl2O3-水フルードの熱物性特性,つまり,有効動粘度の増加と有効体膨張係数の減少が起因となり,結果としてAl2O3ー水ナノフルードの自然対流熱伝達が水のそれよりも抑制されることがわかった.なお,Al2O3粒子径に依らずレーリー数および体積分率が小さいときは参照温度の差異により,局所温度分布の変化が観察されることがわかったが,レーリー数および体積分率が大きくなると温度分布の変化は観察されなかいことがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題名「ナノフルードは次世代の革新的な熱輸送媒体になりうるのか?」であるが,これまでにおけるAl2O3ー水ナノフルードの自然対流熱伝達研究および強制対流熱伝達研究より,ベースフルードの水の熱伝達と比較してAl2O3ー水ナノフルードの飛躍的な熱伝達促進はまったく見出されず,反対に抑制されることが明らかになってきた. 今年度も引き続き,広範なAl2O3ー水ナノフルードの自然対流熱伝達研究および強制対流熱伝達研究,そして,Al2O3ー水ナノフルードの熱物性測定,具体的には有効粘度測定および有効熱伝導率測定からAl2O3ー水ナノフルードの自然対流および強制対流熱伝達特性を解明し,これら熱伝達性能を左右する因子を特定するとともに熱伝達促進が起きる条件を見出すことを目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため,研究発表予定であった日本機械学会東北支部第55期講演会および化学工学会第85年会が中止になった.この結果,これらの旅費が次年度使用額として121,485円生じた.
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