熱伝達測定装置を作製し,これを用いて等熱流束加熱された円管内層流強制対流におけるAl2O3-水ナノフルードの熱伝達特性を実験的に検討した.この結果,ナノフルードの熱伝達はベース流体のそれよりも減少するが,この減少度合いは流入温度に依存し,レイノルズ数にはほとんど依存しないことなどを明らかにした. 音叉振動式粘度計によりAl2O3-水ナノフルードの有効粘度とその温度依存性を測定した.この結果,精製水,粘度計校正用標準液,そしてシリコンオイルにおいて測定された粘度は文献値からの差異が5%以下であった.一方,Al2O3-水ナノフルードにおいて測定された有効粘度はベース流体の粘度よりも大きい値を示したが,文献値とは大きく異なった.単層流体の粘度測定により使用装置の高い測定精度が示されたが,本装置を用いた固液二層流の有効粘度測定に関しては今後さらなる検討が必要である. 平板比較法の原理に基づいて作製した実験装置を用いてAl2O3-水ナノフルードの有効熱伝導率とその温度依存性を測定した.この結果,体積分率5.7%と2.85%のナノフルードの有効熱伝導率は水の熱伝導率よりも大きい値を示し,それらの測定値は参考文献に示された実験相関式の範囲内であった.なお,ナノフルードの体積分率が半分になると有効熱伝導率は最小で6.27%,最大で16.0%低下することが確認された. 密閉円筒容器内および水平円管内のAl2O3-水ナノフルードの自然対流と強制対流における熱伝達特性を数値解析的に検討した.この結果,竪型円筒容器内およびレイリーベナール条件下における薄い竪型円筒容器内に満たされたナノフルードの自然対流の熱伝達は参照温度にかかわらず水のそれよりも小さくなることがわかった.一方,ナノフルードの円管内層流強制対流の熱伝達も参照温度にかかわらず水のそれよりも小さくなることがわかった.
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