令和2年度は前年度に引き続き、正ヘプタンを燃料とした実験を実施した。前年度は火炎の変動が非常に大きいため消炎限界の正確な測定が困難であったが、その原因が燃料気化装置にあると考え、その改良を行った。それまで金属製継手の内部にグラスウールを封入した装置であったが、金属製継手からT字型ガラスに変更し、内部のグラスウールの状況が明確に観察できるようにした。その結果、火炎の変動を有意に抑制できた。そしてその装置を用いて正ヘプタンの消炎限界を測定した。その結果、正ヘプタンにおいても希薄可燃限界よりかなり低い当量比における超希薄燃焼が実現できることを確認した。なおその際、流量が増加するに従って一旦消炎限界が低下(希薄側に移動)するが、続いて上昇し、再び低下するという独特な振る舞いを示すことが分かった。この振る舞いはメタンやプロパン、正ブタンでは見られないものである。 なお数値計算においては前年度に引き続きプロパンを対象にした軸対称非定常の計算を行なったが、実験との火炎形状の違いは埋まらなかった。ガラス管壁面付近で下流に凸であることは実験と定性的に一致しているが、その曲率が大きく異なり、計算で与えているガラス管壁面での境界条件、あるいはガラス管内部の固相の計算モデルに問題がある可能性が示唆された。 3年間の研究を通じて、メタン、プロパン、正ブタン、正ヘプタンのいずれの炭化水素燃料の場合も旋回流バーナを用いて超希薄燃焼が実現可能であることを確認した。そして、メタン以外の燃料では全て壁面付近で火炎が下流に向かって凸であるアサガオ状の形状を示すことから、不足成分のルイス数が1以上の希薄予混合気が負の火炎伸長を受けることによる拡散熱的不均衡が、これらの火炎の強化の主たるメカニズムである可能性が高いという結論を得た。
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