研究課題/領域番号 |
18K03970
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田中 学 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (20292667)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱工学 / 生物・生体工学 / 流体工学 |
研究実績の概要 |
本研究は,複雑形状を有する鼻腔内の往復流によるエアコンディショニング機能の,3次元医療画像要素(ボリュームピクセル:ボクセル)を利用したモデリングによる解析手法を確立することを目的とする. 本年度は,定常及び嗅動作を模擬した非定常流量条件において流れ場と温度場のシミュレーションを実施し,従来の境界適合格子法との比較により,その有用性を検討した.また,本手法の優れた並列化効率を活かして,格子を渦の最小スケールまで細分化した直接数値計算(DNS)を実施し,鼻腔内に生じる流れの不安定性を調査した. その結果,本手法により鼻腔狭窄部下流におけるジェットや再循環流の発生等,鼻腔内の特徴的な流れの構造を精度良く再現可能であることを明らかにした.DNSにおいては,ジェットと再循環流の間に形成されるせん断層においてケルビンヘルムホルツ不安定流れを確認し,比較的低いレイノルズ数においても乱流に近いパワースペクトルを示すことを明らかにした.また従来手法との比較から,本手法が鼻腔の複雑形状に対して高速で安定した格子生成を実現し,鼻腔内の遷移流れの解析に有用であることを明らかにした. 一方,シミュレーションの結果を検証するために,医用画像から3Dプリンタにより鼻腔モデル流路を作製して,非定常流動条件下で流れの可視化実験を実施した.粒子画像流速測定法(PIV)により,鼻腔内の乱れの時間・空間分布を調査した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
格子を渦の最小スケールまで細分化したDNSを実施し,鼻腔内に生じる流れの不安定性を調査した.特に,比較的低いレイノルズ数においても乱流に近いパワースペクトルを示すことが確認出来た. 鼻腔モデル流路を作製して,非定常流動条件下で流れの可視化実験を実施した.PIVにより,加速及び減速時において,流れの不安定性や乱れがどのような部位で発生するかを明らかにすることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
DNS解析とPIV実験の結果を比較して,解析結果の妥当性を検証する.流れの不安定性や乱れは鼻腔の各機能に重要な影響を及ぼすため,実験で得られた流動状態を解析の流動モデルに反映させる必要がある. 本提案手法を実際に鼻腔形成手術を受けた鼻腔疾患患者の術前・術後における医療診断画像に応用してシミュレーションのを実施し,格子生成の簡易化及び自動化の効果を検証する.鼻腔疾患患者の鼻腔の構造と流れ,機能に関する解析結果と,医師の診断所見,患者の症状・感覚との関係について検討し,本手法の診断・治療支援システムとしての有効性を明らかにする.
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