研究課題/領域番号 |
18K03974
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
櫻井 篤 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20529614)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 熱ふく射 / 機械学習 / メタマテリアル |
研究実績の概要 |
本研究が描く将来像は,社会・産業界からのニーズに合わせて,新たな熱ふく射制御材料を逆デザインし,それを社会・産業界に還元できることである.そこで本研究では,自由自在に熱ふく射スペクトルを制御できるメタマテリアルを,機械学習をベースとしたマテリアルズ・インフォマティクスによって逆デザインを行うことを目的としている.また、新しいナノ構造による未知のメタマテリアルを見出し,そこから派生する新たな熱ふく射スペクトル制御理論について知識基盤を構築する. これまでに1次元メタマテリアルについては,基礎となる数値解析ツールはほぼ完成した.1次元メタマテリアルの場合は多層膜構造であるため,各層の厚さと材料の組み合わせが主な設計パラメータとなる.したがって比較的容易に電磁波シミュレーションを行うことが可能であった。 次に、この設計法に基づき、赤外線ヒーターへの応用を目的として,特定の波長帯(ここではそれぞれ5,6,7um帯)において狭帯域熱ふく射を放射する赤外線エミッターを設計した.これにより、狙った波長帯において,極めて狭帯域な熱ふく射を波長選択的に放射できる可能性が示された.これも非周期的な層構造によって発現されるものであり,電磁界分布を可視化すると特定の層に光が局在するモードが観察された.また、スパッタリング法によって、実際にこの赤外線エミッターを作製し、その光学特性を計測した結果、良好な狭帯域熱ふく射が放射されていることを実証した. この熱放射機構を基盤として,新しく損失の少ない材料を候補材料として選択することで,さらに熱ふく射を狭帯域化させることが可能であることを計算機シミュレーションによって明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性能評価から数値解析ツールへのフィードバックを行ったところ,狭帯域熱ふく射の放射機構としてフォトニックバンドの形成および材料自身の電磁気学的な損失に大きく起因していることを明らかにした.その知見を元に新たな狭帯域熱ふく射材料の開発に向けて,計算機シミュレーション技術が向上した.
|
今後の研究の推進方策 |
さらに高度な機械学習法(モンテカルロ木探索法や量子アニーリング等)を導入し,より高効率なメタマテリアルデザイン法について引き続き研究を推進する.さらに,そのデザインを基にスパッタリングあるいは蒸着による薄膜形成とエッチングによりナノ構造パターンを形成する等、実証実験を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
設計したメタマテリアルの作製費が、想定より安価であったため、一部繰り越し金が発生した。次年度は、この繰り越し金と合わせて、光学特性評価システムの構築に使用する。
|