研究課題/領域番号 |
18K03982
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
東 之弘 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 教授 (90183095)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱物性測定 / 気液臨界点 / 混合冷媒 / 臨界定数 / 相関式 |
研究実績の概要 |
冷凍機やエアコンで使用されてきた特定フロン物質(CFC冷媒及びHCFC冷媒)は、オゾン層破壊や地球温暖化への影響が大きく、モントリオール議定書、京都議定書で世界的な規制が行われ、代替フロン物質としてHFC 冷媒が普及している。しかし、平成28年のパリ協定とキガリ改定によりHFC 冷媒も規制対象冷媒となり、新冷媒の探索が急務となってきた。その状況下で、地球温暖化に影響の少ないオレフィン系ハロゲン化炭化水素(HFO)が注目され、将来的には3成分系混合冷媒の活用が現時点から注目されているが、この正確な熱物性値情報はほとんど解明されていない。 本研究は、新しい3成分系混合冷媒の熱物性を解明するため、特に3成分系混合冷媒の臨界定数に関する研究を行う。平成30年度は、6月にアメリカのコロラド大学で開催された第20回熱物性シンポジウム、札幌で開催されたアジア冷凍空調国際会議、名古屋で開催された日本熱物性シンポジウムなどに出席し、混合冷媒全般の熱物性に関する最新情報の調査を行った。その結果、3成分系混合冷媒の臨界定数に関する実験的研究だけでなく、解析的研究もほとんど実施されていないことが確認できた。実験的研究では、HFO系冷媒であるR1234yfに、R32及びCO2を混ぜた3成分系混合冷媒について、質量比で75.5%R1234yf + 21.5% R32 + 3%CO2において、3成分系混合冷媒の臨界点近傍における飽和蒸気密度及び飽和液密度の測定を行った。さらに、気液境界面であるメニスカスが温度の上昇に伴ってその位置を変えながら消滅していく現象を肉眼で観察する方法で、この混合系の臨界温度および臨界密度を実測により決定した。また、等容法による測定装置を用いて、PVT性質を測定し、実験的に臨界圧力も決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、国内外の学会・シンポジウムに積極的に参加し、本研究の世界的な動向及び進捗状況を調査し、地球温暖化係数が低いオレフィン系冷媒であるHFO冷媒を成分物質とする混合冷媒に関する熱物性研究が、3成分系混合冷媒に限らず、その基盤とも言える2成分系混合冷媒でさえ発信情報量が少ないことを確認し、研究の必要性を認識した。特に混合冷媒の臨界定数の実験的研究に関しては、現時点で全く他に例を見ないことも確認できた。 その臨界点測定実験に関して、3成分系混合冷媒では、成分物質の組み合わせにより熱物性も複雑となり、実験自体が非常に時間のかかる研究になるが、幸いにも平成30年度は実験装置の故障もなく、早期から実験を開始できたので、平成30年度計画していた3成分系混合冷媒であるR1234yf+R32+CO2系混合冷媒の臨界定数の決定を、計画通りに遂行できた。 したがって、研究は、実験計画どおりおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で、申請書の実施計画通りに進行しているので、引き続いて実施計画に基づいて進めていく予定である。計画通り研究が進行すれば、成果は確実に得られてくるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、実験装置の稼働率が良かったので、実験を滞らせることなく進めることができ、装置の改良を次年度に回す結果となった。そのため、旅費以外での予算使用分が残ったために、残額が生じ、次年度は、測定の効率を上げるための装置の改良に取り組むため、平成30年度の残予算を、改善費用にあてる予定であて、さらに本年度同様に、研究動向調査を行う予定にしている。
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