燃料噴霧の自着火の基礎研究において,これまで実験では直径1mm程度の粗大燃料液滴が対象とされ,また,液滴間の干渉効果に関する研究では直径の揃った液滴群が扱われてきた.しかしながら,実際の噴霧を構成する液滴は直径数10ミクロンオーダーと小さく,また,その大きさにはばらつきがある.粗大液滴の知見を微小液滴に応用する際には輸送の特性時間のオーダーが異なるため注意を要する.また,液滴径に分散がある場合の液滴群の自着火が支配因子について未解明である.以上より,本研究の目的は以下である.①実用レベルの微小液滴を対象とし,その蒸発・自着火特性を調査する.②直径の異なる複数液滴の自着火を支配する因子を明らかにする.①について,ピエゾ式インジェクタによる微小液滴生成装置を製作し,高温雰囲気中の微小液滴の蒸発特性が粗大液滴のそれに従うことを確認した.また,発光を伴わない冷炎の発生が液滴径履歴より確認可能であることを示した.一方,生成される微小液滴の移動経路に若干のばらつきがあることが課題として残った.②については,直径の異なる複数粗大液滴の高温空気中の自着火の実験を行った.これにより,直径の小さい方の単一液滴の場合よりも,複数液滴の方が系全体の自着火が促進される条件が存在することが実験的に初めて確認された.また,直径の異なる二液滴を対象とする数値計算コードを用い,上記現象のメカニズムを明らかにし,また液滴間干渉の自着火への影響が液滴径,液滴間隔,雰囲気条件の諸条件により異なること,概して小さい液滴の存在が系全体の現象に対して支配的であるが,点火限界近傍では異なることを示した.
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