対流伝熱の促進や制御についての知見を得るために,常磁性流体への磁気力の効果について研究を進めた.これまでは強力な超電導電磁石を用いた研究が報告されているが,本研究ではコストの小さい永久磁石を複数用いた対流制御手法に関する知見を得ることを目的とした.2020年度も引き続き実験並びに数値解析的研究を実施した. 前年度に得た知見から,複数個並べた磁石の間で強い磁気力を生じることがわかったので,これを温度成層状態の流体に印加することで対流誘起を起こせると判断して実験を実施した.具体的には上面加熱,下面冷却の容器の上部に磁石を置いて.加熱面の温度分布を計測した.その結果,2個の磁石を並べた場合で最も局所的な効果が大きくなることがわかった.磁石を増やすことで効果の増大を期待したが,磁場印加の領域は広がるものの局所的なピーク値はむしろ低下することがわかった.この現象について詳細に検討すべく格子ボルツマン法の解析コードを作成し数値解析も実施した.実験に近いパラメータで解析したところ,磁石の接合部で強力な引力が生じて渦流れを誘起すること,磁石が多いと温度分布により誘発される磁気力の分布が相対的に弱くなることがわかった.また,誘起された対流により高温流体領域が拡張し,磁石以外の領域の加熱面の局所ヌセルト数が熱伝導状態の値を下回ることも確認された. 以上から,磁場印加による特殊な対流駆動の様相とそのメカニズムを明らかにすることができた.
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