研究課題/領域番号 |
18K03990
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
高橋 和夫 上智大学, 理工学部, 教授 (10241019)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高圧衝撃波管 / 低温酸化 / 冷炎 / ノッキング / 反応モデル / 着火遅れ |
研究実績の概要 |
化学衝撃波管は衝撃波圧縮を利用した反応容器であり,試料気体をナノ秒オーダーの立ち上がりで空間的に均一に昇圧・昇温が可能であることから,これまで高温化学反応研究や着火研究に広く用いられてきた。しかし,この装置の欠点は衝撃波加熱された試料気体が高温のまま維持される時間(高温持続時間)が,通常1~1.5ミリ秒と極めて短いことにある。本研究では,現在工学分野で用途の高まっている高圧衝撃波管の高温持続時間を延ばすための装置開発を行う。開発した装置を用いて,自動車エンジンのノック現象解明の鍵を握ると考えられている冷炎を観測し,未だ理解が十分でない低温酸化の全貌を明らかにする。この実証研究を通して,これまで理想的な反応場が存在しない,650~1000 Kにおける中間温度域の化学反応追跡法として確立することを目指す。研究初年度である本年度は次の研究を行った。 【性能評価のためのセンサー設置と高温持続時間の計測】まず開発研究に先立ち,既存の高圧衝撃波管低圧部の管軸方向に複数の圧力センサーを取り付けて,衝撃波の到達(衝撃波加熱の開始)から希薄波の到達(冷却の開始)までの高温持続時間を評価するようにした。その後,既存高圧衝撃波管の高温持続時間を計測した。Tailored条件を満たすことにより,既存の衝撃波管でも11 msの最大高温維持時間を得ることができた。 【冷炎観測のための分光装置構築】長い高温持続時間を有する高圧衝撃波管の応用研究への有効性を実証するため,冷炎を観測するための分光装置を構築した。具体的には,①冷炎発生時に検出される電子励起ホルムアルデヒド(395.2 nm)の発光計測と②レーザー赤外吸収法(3400.2 nm)を用いた冷炎発生に伴う燃料消費の計測という異なる2種類の分光学的手法に起因する装置を構築し,どちらも高感度で冷炎を観測することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『研究実績の概要』でも示したように,高圧衝撃波管の高温持続時間評価のためのセンサー設置と現存の装置の計測が完了するとともに,応用実験で用いる冷炎観測のための分光装置構築が完了した。より長い高温持続時間を実現するための装置開発を行う準備が整ったので,今後の研究成果に期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画調書に記載した研究計画に従って研究を推進していくことにより,本研究の最終目的を達成できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
理 由:次年度使用のための繰越金は262,203円である。これは衝撃波性能評価のための圧力センサーを購入せず,既存のものを使用したために発生したものである。
使用計画:今年度の未使用分については,価格が高騰している衝撃波発生用のヘリウムガス代として次年度に使用する。
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