研究課題/領域番号 |
18K03991
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
森本 久雄 東洋大学, 理工学部, 教授 (00385957)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / 温熱療法 / 自己配列化 / 交流磁場 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,強磁性ナノ粒子の自己配列化およびこれが高周波交流磁場中における粒子の発熱におよぼす影響を明らかにすることである.2018 年度は,磁性ナノ粒子に磁場を印加するためのコイルシステムを作製した.これは既存の高周波交流磁場発生用のコイルと組み合わせて直流・交流磁場を同時に印加出来るようになっている.このコイルシステムと鉄および酸化鉄ナノ粒子を用いて予備実験を実施した.ナノ粒子を水に分散させた溶液を基盤に滴下し,これに先のコイルシステムを用いて磁場を印加した.溶媒が蒸発した後に基板上のナノ粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した.無磁場,直流磁場,交流磁場,および直流・交流複合磁場の各条件に応じて粒子の自己配列化構造およびそのサイズに変化がみられた.また本実験ではナノ粒子を水に分散させたため,疎水性引力に起因するとみられる粒子の凝集がみられた.粒子分散性の改善は今後の課題である.次にこれら基板上のナノ粒子の磁気特性を SQUID(超伝導量子干渉素子)を用いて測定した.自己配列化構造の違いに応じて磁化曲線に変化がみられたものの磁気モーメントの値は非常に低く,今後より詳細な検討が必要である.一方,実験と並行してブラウン動力学シミュレーションにより交流磁場中における強磁性ナノ粒子の自己配列化および磁気緩和過程を解析した.本解析では粒子は球状かつ単磁区であるとし,磁気モーメントは粒子に固定されているものとした.粒子間相互作用の強さや交流磁場の振幅などのパラメターを変化させて解析を行った.粒子間相互作用が強くなると粒子はループ状に配列化するようになる.このとき各粒子の磁気モーメントはループに沿った方向を向いており,系全体の磁気モーメントはほぼゼロになるとともに磁気ヒステリシスもほとんどみられなくなることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁性ナノ粒子に磁場を印加するためのコイルシステムを作製しこれを用いた予備実験を実施した.予備実験では粒子の自己配列化構造の観察ならびにその磁気特性の測定に成功した.またブラウン動力学シミュレーションにより交流磁場中における強磁性ナノ粒子の自己配列化および磁気緩和過程を解析した.これまでのところ研究はおおむね順調に進展している.しかしながら実験については「研究実績の概要」に示したように,ナノ粒子の溶媒への分散性向上および磁気特性評価方法の一部見直しが必要であり,これらについては今後の研究に遅れが生じないよう早急に対応したい.
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今後の研究の推進方策 |
実験では磁性ナノ粒子を液体に分散させて使用するが,溶媒の再検討および界面活性剤の使用など粒子の分散性改善を図る.またナノ粒子の磁気特性評価に際してのサンプル作成,測定条件およびデータ解析法等の見直しを行う.そのうえで外部磁場中におけるナノ粒子の自己配列化およびこれが粒子の磁気特性におよぼす効果を詳細に解析する.ブラウン動力学シミュレーションによる解析は前年度に引き続き行うが,交流磁場に加えて直流磁場を同時に印加した際の自己配列化構造ならびにその磁気特性を解析する.直流磁場の印加によって粒子が形成するループ構造が崩壊し,磁気ヒステリシスがみられるようになると期待される.本解析ではヒステリシスループの面積から粒子発熱量を評価する.
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