研究課題/領域番号 |
18K03993
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
牧野 敦 愛知工業大学, 工学部, 教授 (60165678)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 固体粒子の燃焼 / 限界粒径 / 着火条件 / 燃焼活性化条件 / 消炎条件 |
研究実績の概要 |
固体粒子の燃焼促進には粒子径の微細化が推奨されているが,伝熱工学的には伝熱表面積の増大,ひいては熱損失の増大を意味しており,着火や燃焼維持の妨げになることが申請者により提唱されている.燃焼率に及ぼす粒子径の影響に関する文献調査は,当該研究の開始に先立って行ったものの,最新の研究動向を確認するため,第37回国際燃焼学会(2018年7月29日~8月3日,アイルランド・ダブリンにて開催)への参加を行った.これにより,この種の研究が未だ注目されていないことが確認された.なお,燃焼状態への移行条件については,粒径や燃焼率の限界値がすでに公表されているものの,燃焼速度定数に関する新たな限界が見出されたため,第56回燃焼シンポジウム(平成30年11月14日~16日,堺にて開催)で講演発表を行ってきた. 実験においては,平面状火炎にて高温酸化雰囲気を作り出す方式を採用しているが,安定した平面状火炎を形成させるには多孔質材料の適切な選定が不可欠なこと,高温酸化雰囲気を準一次元的気流とするには循環渦の形成を抑制する流路形状が必要なことなどが明確となり,これらの方向で対処しつつある.初年度の実験では,準一次元的な高温酸化雰囲気の気流が得られたとは言い難い状況ではあったが,雰囲気温度や酸素濃度(質量分率)を広範囲に変えられるように,酸素やメタンの供給系の改良を施した.その上で,ふるい分けされた粒子(10,30,60,90,120 μm程度)を投入し,燃焼するか否かの確認を粒子の色温度を観察しつつ行った.実験回数があまり多くはないものの,解析が提示している「包括パラメタ」(粒径と酸素質量分率と圧力比の積)のアレニウス線図(縦軸:包括パラメタの対数.横軸:雰囲気温度の逆数)を用いれば,粒径や酸素質量分率がそれぞれの限界値以上の場合にのみ粒子燃焼が観察され,燃焼が完結することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体粒子の燃焼促進において,粒子径の微細化がいかなる役割を果たしているのかを,伝熱工学や燃焼工学に立脚しつつ,実験ならびに解析の両面から,学術的・基盤的に調査しようとしている. 文献調査という点では,最新の研究動向を確認するため,アイルランド・ダブリンにて開催された第37回国際燃焼学会(2018年7月29日~8月3日)へ参加し,当該研究のように粒子径の微細化に着目した研究が皆無であることを再確認してきた. 解析では「漸近解析」の手法を用いているが,公表済みの粒径や燃焼率の限界値以外に,燃焼速度定数に関する新たな限界が見出されたので,関連学会(第56回燃焼シンポジウム,平成30年11月14日~16日,堺)にて発表してきた.また,燃焼活性化の条件以外に消炎の条件についても,研究協力者が同様の手法で解析に着手しており,消炎が生じる粒径は酸化剤が空気であれば3 μm程度であることを見出している. 実験においては,安定した平面状火炎を保持しつつ高温酸化雰囲気を形成し,この気流中で黒鉛粒子を燃焼させることを念頭に,装置の改良を実施してきた.これより多孔質材料の適切な選定や,循環渦などの発生を抑制する流路形状が不可欠なことが判明し,これらの方向で対処しつつある.なお,高温酸化雰囲気については準一次元的な気流が得られたとは言い難い状況ではあったが,雰囲気温度や酸素濃度(質量分率)を広範囲に変えられるように,酸素やメタンの供給系の改良を施した.その上で,ふるい分けされた粒子(10,30,60,90,120 μm程度)を投入し,粒子の色温度を観察しつつ燃焼の確認を行った.実験回数が少ないものの,解析が提示している「包括パラメタ」(粒径と酸素質量分率と圧力比の積)を用いれば,粒径や酸素質量分率がそれぞれの限界値以上の場合に粒子燃焼が観察され,燃焼が完結することを確認している.
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今後の研究の推進方策 |
固体粒子が燃焼状態に移行するためには,粒径,雰囲気の酸素濃度ならびに温度がそれぞれ限界値以上でなければならないという解析結果が得られているが,これと直接比較することができ,しかも解析の妥当性を検証できるような実験結果を取得することが,当該研究の主眼である.このためには,実験装置内に安定した平面状火炎を保持して高温酸化雰囲気を形成させるとともに,これを準一元的な気流とし,さらにこの気流中で黒鉛粒子を燃焼させることが必要である.このため,平面状火炎を保持する多孔質材料の選定や,一様流の形成を促す流路形状の整備が急務な課題となっており,これらの課題を早急に,しかも確実に解決しなければならないと考えている. これらが達成された後には,雰囲気の温度や酸素濃度(質量分率)を広範に変えつつも,ふるい分けされた粒子をこの気流中に投入し,燃焼状態に移行するか否かを,粒子の色温度を観察しつつ調べていきたいと考えている. 燃焼活性化ならびに消炎の条件に関する解析結果については,過去に類似の研究例がないため,11月に開催される日本燃焼学会の研究集会にて研究協力者が講演発表することを目指している.なお,その際,解析結果と比較可能な実験結果も記載できるように,実験計画を立てていきたいと考えている. また,二酸化炭素(CO2)の回収を想定して考案されたoxy-fuel燃焼についても,酸化剤として用いる気体は,空気中に含まれる窒素を二酸化炭素に置換えた気体であるため,本実験装置にCO2ガス供給系を整備すれば,この方面の研究においても基礎的・基盤的実験が実施可能である.そのため,微粉炭oxy-fuel燃焼についても,粒径,酸素濃度,雰囲気温度などを広範に変化させて,最適条件や燃焼活性化条件,さらには燃焼完結条件などを系統的に調べていきたいと考えている.
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