研究課題/領域番号 |
18K03996
|
研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
片峯 英次 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00224452)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 最適設計 / 形状最適化 / 形状同定 / 連成問題 / 有限要素法 / 随伴変数法 |
研究実績の概要 |
本研究では,申請者がこれまでに取り組んできた定常問題における形状最適化を非定常問題へ展開する.実際には,熱弾性場,あるいは熱対流場などの連成場問題に対して,時間発展型のマルチフィジックス問題における合理的な形状最適化の解法を提案し,その妥当性を検証することを目的とした.平成30年度の主な研究実績は次の通りである. 1.本課題の予備研究として連成場でない粘性流れ場問題を取り上げた.非定常一様流中に置かれた孤立物体に生じる抗力・揚力の時間履歴が目標値になるような孤立物体の形状決定問題,あるいは抗力の最小化,揚力の最大化を目的とした孤立物体の形状決定問題の解法を提案し,数値解析例を通じてその解法の妥当性を検討した.得られた研究成果を雑誌論文へ投稿した. 2.非定常熱弾性場における熱変形に関して,(a)任意時間内における熱変形が最小となるように形状と決定する剛性最大化問題,(b)熱変形の時間履歴が目標値になるような形状を決定する熱変位時間履歴規定問題に対して検討を行った.(b)の熱変位時間履歴規定問題では,実際の熱変位時間履歴と目標の熱変位時間履歴との二乗誤差最小化を目的汎関数に設定した形状最適化問題の定式化を行った.定式化に基づいて,形状修正の感度関数の導出,FreeFem++を利用した解析プログラムの開発を行って,簡単な数値解析結果より,解法の妥当性を確認した.研究成果を口頭発表した. 3.非定常自然対流場問題に対して,ある部分領域での流速時間履歴が目標値になるような形状を決定する流速時間履歴規定問題に関して検討を試み,基礎的な研究成果を口頭発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度から令和3年度の4年間において,具体的な問題として, (1)熱弾性場における熱変形分布などの状態変数の時間履歴をコントロールする形状決定問題,(2)熱対流場における流速・温度分布の時間履歴をコントロールする形状決定問題,(3)熱弾性場,熱対流場における多目的形状最適化等を取り上げ,問題の定式化,形状修正のための感度関数の理論的導出,およびその感度関数を用いた数値解析を行って,提案する解法の妥当性について検証することを目的としている. 1.非定常熱弾性場問題においては,(1-a)熱変形が最小となるように形状と決定する剛性最大化問題,(1-b)熱変位の時間履歴が目標値になるような形状を決定する熱変位時間履歴規定問題に対して検討を行い,基礎的な研究成果が得られつつある.具体的には,この二つの問題に対して,問題の定式化を行い,随伴変数法を使用して形状修正のための分布系感度関数を理論的に導出した.その後, 解法のアルゴリズムを提案した.実際の解析手順は,感度関数を評価するための通常の非定常熱伝導場・熱弾性場解析,随伴非定常熱伝導場・熱弾性場解析,および形状修正解析の合計 5 つの有限要素解析ステップによって繰り返す解析である.最後に,二次元問題のプログラムを開発し,数値解析を行って提案する解法の妥当性を検証した. 2.非定常自然対流場問題においては,部分領域での流速時間履歴が目標値になるような形状を決定する流速時間履歴規定問題,あるいは部分領域における流速最大化問題に対して検討を試みた.問題の定式化を行い,形状修正の感度関数の導出,解析プログラムの開発を行い,簡単な数値解析結果より解法の妥当性を検証した.
|
今後の研究の推進方策 |
熱弾性場問題では,非定常の指定する時間域変化に対して,得られる剛性最大化形状の違い,あるいは熱変位時間履歴規定による形状の違いについて検討を行う.自然熱対流場問題では,流速時間履歴規定と散逸エネルギー最小化の多目的形状最適化の解法について検討を行う. これまでに得られた研究成果について,国内,国際会議において口頭発表,および雑誌論文として発表することを計画している.
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:当初の計画では,高性能を有する計算機を購入し,熱弾性場問題のみに関して,大規模な数値解析を実施する予定をしていた.しかしながら,高性能計算機を利用して大規模で複雑な解析を行うよりも,比較的簡単な熱弾性場問題および熱対流場問題に対して,形状最適化理論そのものの検証,その理論に基づくプログラム開発,数値解析によって,提示する解法の基本的な妥当性の検証を優先した.そこで,本年度は,高性能数値計算機の購入を一旦保留し,熱弾性場および熱対流場に対する最適化理論の構築,解析プログラムの開発,および数値解析を実施した.その結果として,次年度使用額が生じた. 使用計画:上記に関連して,大規模数値計算機1台で数値解析を実施するか,あるいは,複数の中規模数値計算機によって数値解析を実施するか検討を行って,いずれかの解析方法を決定して計算機を購入する予定である.
|