熱電材料の発電性能はゼーベック係数の二乗と電気伝導率の積で表され、この積が高いくなると発電出力が高くなる。しかし、ゼーベック係数はキャリア濃度が高くなると低くなり、電気伝導率は逆に高くなる。ゼーベック係数と電気伝導率はトレードオフの関係にあり、キャリア濃度の最適化で出力因子を最大化することはできる。しかしゼーベック係数と電気伝導率を独立に制御して、出力因子を飛躍的に増加させることはできない。そこで本研究では、高比誘電率の電気伝導性材料を活用して、電気伝導を担う高比誘電率の電気伝導性材料と熱起電力を担う高ゼーベック係数の熱電材料を組み合わせたハイブリッド材料を創製し、トレードオフの呪縛から熱電材料を解放する学理を新たに見出すことを目的とする。 2020年度はハイブリッド材料を構成するNb添加TiO2およびP添加Siの単相膜をスパッタ成膜し、面内方向の熱電特性(ゼーベック係数と電気伝導率)の評価を行った。スパッタ膜の厚さは約1μmとした。Nb添加TiO2の成膜では、膜中の酸素量がスパッタ成膜中に変化する結果となった。得られた膜の熱電特性を評価したが、酸素欠損はホールを生成するため、Nb添加量と熱電特性の明確な相関性を得るには至らなかった。またP添加Siの成膜では、Pが成膜中に蒸発したために膜中のP濃度を予定通りに制御することが困難で、膜中でP濃度が変化す結果となった。~300nmの薄膜に対するスパッタ条件の最適化が課題として明らかになった。
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