本研究は、申請者らが独自に進めてきた静電浮遊法による高温融体測定システムに定圧比熱の温度依存性を測定する機能を付加するものである。これにより、容器を用いた方法では、測定が困難な高温融体の定圧比熱を幅広い温度範囲で計測し、高温融体の熱物性データの拡充することを目的としている。このためには試料の輻射率を独立して計測する必要があり、エリプソメータによる偏光測定から輻射率を算出することを目指している。 今年度は、小型真空チャンバー(直径15cm)の静電浮遊装置を立ち上げて、本装置にエリプソメータ及び加熱レーザーを取り付けて、偏光計測機能の確認を実施した。直径2mm程度の試料では、曲率の影響が大きく、安定した反射光を得ることが困難であることが明らかとなった。一方直径5mm程度の試料では、安定した信号を得ることが出来るものの、重力に逆らって浮遊させることは困難であった。地上の静電浮遊装置にエリプソメータを取り付けて輻射率を測定する試みは1990年代に米国JPLで行われていたが、測定結果はほとんど得られていない。これは本研究で得られた結果と同様の技術的理由が原因と考えられる。(直径1cm程度の試料を浮遊出来る電磁浮遊法では測定結果が公表されている。)試料直径の制限は重力に拮抗するクーロン力の制限に由来している。一方、国際宇宙ステーション等の微小重力環境ではこの制限がなくなり、1cm程度の試料が浮遊可能である。今回得られた知見を基に国際宇宙ステーション用装置への適用検討を進めていく。
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