今年度の目標として、可変アンテナの操作性を向上するために、試液量、制御方法、封止材料に関して検討を進めた。昨年度、ヒータを用いて液体粘度を減少することによって液体アクチュエータの変形特性を向上することが可能であることを確認した。しかし、この時用いていたアクチュエータの端部・周縁部の形状が球面形状から逸脱し、段差構造を形成しており、変形を阻害していることが分かった。これは当初液体アクチュエータに使用していたシリコーンオイルと封止ためのパリレン膜の極性が関与している。当初使用していた材料はともに無極性の素材であるため、蒸着によって膜が形成される過程で形状の偏りが生じる。この偏りは、約 5 μm 程度であるものの静電気力を著しく減少、変形量が減少することが分かった。この偏りの大きさは液体量や装置環境によっても変わるため、制御することが難しく、アンテナ特性に重大な影響を与える。そこで、偏りをなくすため、極性材料である、アミノパリレンを利用した封止を行った。封止材料を変更することによって、偏りが無くなり、アクチュエータの変形特性を向上できることを確認した。また、フェイズドアレイを実現するためには、連続的なアクチュエータ変形を行う必要がある。この時に至適なアクチュエータの駆動方法に関して検証と評価を行った。今回用いた液体アクチュエータは、液体の粘性のために変形に時間を要することもあり、アンテナ共振は数を高速に変えるために適した電圧の印加方法が重要となる。本研究では、矩形波を用いて駆動することで正弦的に駆動するよりも変形量が上昇することが分かった。これは液体の粘性が初期状態で一番大きく抗力をもたらし、一度変形が開始すると変形速度が向上することが原因であると考えられる。これらの結果から、安定して駆動可能なアンテナアレイを実現するためのアクチュエータ構造ならびに駆動方法を実現できた。
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