研究課題/領域番号 |
18K04009
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田原 麻梨江 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60721884)
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研究分担者 |
石河 睦生 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 講師 (90451864)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 音響導波路 / 弾性管 / 加圧分布 / 触覚 / 柔らかい / 高周波音響デバイス / 空中超音波 |
研究実績の概要 |
現在、医療や介護用ロボットの需要が高まっている中、人の指と同等の分解能を持ち、どれくらいの力がどこに加わっているのかを測定できる柔らかい分布型センサが望まれている。本研究では、ゴム製導波路を伝搬する音の特性を利用した、柔らかく、荷重位置の分布を測定できる触覚センサを実現するために、音響導波路のモデル化とその手法を確立することを目的とする。 目的を達成するために、(1)荷重に対するゴム管の変形形状を考慮した音波伝搬解析と実験から、音響導波路の一次元および二次元の音響モデルを確立し、発振する音の周波数と空間分解能との関係を明らかにする。また、(2)1 MHz-10 MHzの広帯域音響デバイスを用いて、モデルの検証を行うことを予定している。本研究の成果により、介護および手術用ロボットやその他産業への応用を目指している。 昨年度は、まず、基本となる1次元のゴム管内の端から音を送受信した場合の管内の周波数スペクトルの基本式を導入した。変形量と反射量との関係について理論値と実験値を比較し、理論式とおおむね一致することを確認した。さらに、二次元のゴム管内の音波伝搬特性として曲げたときの位相の変化を実験的に調べた。また、水熱合成法を用いたニオブ酸カリウムを用いた圧電薄膜振動子の製作を行った。周波数特性の測定および音波の送受信実験結果から、従来よりも低い周波数である10MHz以下で駆動することを確認した。 本年度は,ゴム管の変形量に対するゴム管内の音響特性をより精密に調査するため,FDTD法を用いた音波伝搬シミュレーション法を確立した。また,柔軟な圧電コンポジットを用いた空中超音波振動子を用いてさらに低い周波数である1MHzで駆動できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音響モデルについて:本年度は、音響モデルの高精度化のため,ゴム管の変形とゴム管内の音響特性を模擬するFDTDシミュレーションの確立を行った。まず,昨年度,実験を行った円形形状の1次元の音響導波路と同様の構造に対して,ゴム管の変形を数値的に模擬した。また,周波数をスイープさせた音源を発生し,ゴム管内の定常的な音響特性を観測した。観測した信号に対してFFT演算を2回施すことによって,実験と同様の位置に変形のピークを得ることができた。 音響デバイスについて:昨年度は水熱合成法を用いたニオブ酸カリウムを用いた圧電薄膜振動子の製作を行い,水中内の超音波送受信実験により,5 MHzまでの低周波化に成功した。本年度は圧電コンポジットを用いた振動子を製作し,振動特性の測定と超音波送受信実験の結果から,昨年度よりさらに低い周波数である1 MHzで駆動できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,二次元の音響モデルの確立を目指すため,ゴム管の曲がりによる反射の影響について検討する。また,本年度までは一つの音源についてのみ検討を行ったが音源を増やした場合についても検討する。さらに,これまでは円形のゴム管について検討を行ってきたが,それ以外の任意形状についても検討を行う。FDTDシミュレーションにより,周波数と空間分解能との関係を解明する。 空中超音波振動子については目標である1MHzまでの低い周波数を達成することができた。来年度は,超音波振動子の広帯域化について検討する。また,空中超音波振動子の特性の評価系の確立を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
音響シミュレーションを中心に研究を進めたため,実験で使うゴム管やイヤホン,マイクの購入費用が少なくなった。来年度の実験費用として使用する。
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