研究課題/領域番号 |
18K04012
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
小木曽 公尚 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30379549)
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研究分担者 |
西山 悠 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (60586395)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アクチュエータ / 空気圧駆動 / 非線形 / カルマンフィルタ / 制御 |
研究実績の概要 |
人工筋アクチュエータに適したモデルベース制御・管理の統合化技術の開発を目的とする本研究テーマでは,解決すべき3課題:(1) 柔軟性が調整可能な位置/力制御ロボットアームの開発,(2) 経年劣化診断システムの開発,(3) ネットワーク化による多配置駆動制御ユニットの開発,の解決に取組み,研究目的の達成目指す.そして,人工筋の特性を最大限に生かしたリハビリ装置やパワーアシスト装具に有用な人工筋アクチュエータの開発を行う.2019年度では,昨年度からの継続課題であるロボットアームの数理モデルに基づくモデルベース制御系の開発,多配置人工筋駆動制御ユニットの開発,そして,経年劣化診断システムに必要な制御ユニットの数理モデルの分析に取り組む計画を予定しており,それぞれの成果について以下のとおりである. 柔軟ロボットアームの制御系開発に関して,人工筋の拮抗配置構造による関節トルクおよび関節角度のセンサレス制御系を開発した.この制御系では,非線形カルマンフィルタと昨年同定した人工筋モデルを併用することで,トルクの推定を可能にした.この推定機構からのトルク推定値および小型エンコーダからの角度情報をフィードバックすることで,目標角度・トルクへの追従を実現するセンサレスフィードバック制御系を構築した.一方,多配置人工筋制御ユニットでは,比較的細いチューブの人工筋が必要であることから,上記の制御ユニットとは異なる小型の拮抗配置構造の人工筋制御ユニットを制作し,その計測・制御系を構築した.制御実験から,関節部の回転角度や回転トルクのPID制御により,ヒトが使うのに十分な精度で制御ができることを確認した.そして,経年劣化診断システムのコアになる人工筋モデルを求めるため,昨年度制作した人工筋ユニットの制御モデルが小型の制御ユニットの制御モデルとして妥当かどうか,検証を現在進めている段階である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定していた若手研究 (平成25-27年度)の支援を受けて制作した拮抗型人工筋制御系が二つ以上組み合わせてロボットアームや12本で構成される無骨格人工筋システムを構築する計画で検討していたが,ユニットを連結することでアームの質量およびモーメントが想定したよりも大きくなることがわかった.そこで,小型・計量な人工筋制御ユニットの再設計がすることが求められ,ロボットアームや多配置人工筋制御ユニットの開発を行うことになった.この小型ユニットの人工筋肉には,株式会社コガネイ製Pneumuscle(直径5mm)を用い,筺体には3Dプリンタで制作した樹脂製の軽量筺体を制作した.回転角度の計測には,磁器製エンコーダを筺体内部に埋め込み,回転トルク計測には,専用の脱着式トルク計測台を制作した.これらの機能実現により,検証用計測の場合には,トルク及び回転計測が可能であり,ロボットアームとして筺体を連結する際には,トルクセンサが干渉しない構造になっている.これらの筺体設計や計測装置を準備するのに時間を要したため,本研究課題の進捗は実施計画に対してやや遅れている.しかしながら,この計測装置は今後のロボットアーム開発や多配置人工筋制御ユニットの計測に欠かせない重要な機構である.
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今後の研究の推進方策 |
小型の人工筋制御ユニットを用いたロボットアームや多配置人工筋制御ユニットの制作を完了し,回転角度・トルクの同時制御を実現する制御系の構築が今後の課題である.そのために,2019年度に作成した小型の人工筋制御ユニットに対してセンサレス制御系を実現することが重要である.センサレス化には,これまでに培った人工筋の数理モデルを用いた非線形カルマンフィルタを構築し,ロボットアームのセンサレス化および軽量化を実現する.また,各センサのネットワーク化実装およびカルマンフィルタによる推定精度の議論を経て,回転角度・トルクを同時に制御可能な制御系を構築する.これにより,柔軟性の調整が可能な人工筋アクチュエータ(試験機)が完成となる. また,上述の研究過程で得られた数理モデルを用いて,機械学習により状態の識別器を構築することがもう一つの課題である.この識別器は,学術雑誌として論文化したデータ駆動的アプローチにより構成し,ロボットアームや多配置人工筋制御ユニットのデータからそれぞれの経年劣化状態を分類する.この仕組をカルマンフィルタと併用することで,経年劣化の状況を把握しつつ,経年によるアクチュエータの性能劣化をフィードバック制御器で適応的に補う制御系の構築が可能になる.このような経年劣化診断システムの開発を目指す.
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