人工筋アクチュエータに適したモデルベース制御・管理の統合化技術の開発を目的とする本研究テーマでは,つぎの3課題:(1) 柔軟性が調整可能な位置/力制御ロボットアームの開発,(2) 経年劣化診断システムの開発,(3) ネットワーク化による多配置駆動制御ユニットの開発,の解決に取組み,研究目的の達成目指す. 2020年度では,昨年度に開発した拮抗配置構造の人工筋駆動制御ユニットおよびその数理モデルに基づき,各課題に関わる基礎的な研究成果が4つ得られている.(a) 人工筋駆動制御ユニットの柔軟性を剛性で定義することにより,剛性とジョイント角度の数理的な関係を明らかにした.この剛性-角度の関係を制御システムに取り入れることで,剛性とジョイント角度を独立かつ同時に制御可能な人工筋駆動制御ユニットの剛性角度同時制御システム(制御アルゴリズム)を開発した.(b) 経年劣化の状況を数理モデルで捉えるためには,数理モデルの妥当性を検証する必要がある.そこで,駆動制御ユニットの数理モデルと非線形カルマンフィルタを用いたセンサレス制御システムを開発した.具体的には,ジョイント角度を計測するエンコーダや,ジョイントトルクを計測するトルクセンサを用いない制御技術であり,90%以上の計測精度を再現できる程度には妥当なモデルであることを実証した.(c) 人工筋ユニットのネットワーク化がサイバーセキュリティの脅威(脆弱性)になることを見越し,剛性角度同時制御システムに暗号化制御技術を適用することで,駆動制御ユニットにてサイバー攻撃をリアルタイムで検知可能な技術を開発した.(d) 所望の剛性や角度を実現する人工筋制御駆動ユニットの設計手順を明らかにした.機械要素設計に基づくアプローチであり,所望の柔軟性や可動領域を実現する人工筋制御ユニットの製作が可能となった.以上4つの成果を国際誌へ投稿及び準備中である.
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