研究課題/領域番号 |
18K04017
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
川崎 晴久 岐阜大学, 工学部, 特任教授・名誉教授 (40224761)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 昇降ロボット / 不静定問題 / 姿勢制御 / 外乱オブザーバ / 枝打ちロボット |
研究実績の概要 |
円筒昇降ロボットは、電柱等の点検ロボットや森林での枝打ちロボット等幅広い応用がある。自重を利用した昇降ロボットが細りのある円筒を昇ると、細りの影響でロボットの姿勢が変化し、点検や作業が困難となる。この解決のため、上下の車輪間の水平距離を調整する1自由度アームによる姿勢調整機構を設け、下部は姿勢のPID制御、上部は下部位置のPID制御による姿勢調整法が考案した。しかし、自重を利用した昇降ロボットは、車輪と円筒との接触点での抗力や摩擦力が一意に定まらない不静定問題を抱え、姿勢調整時に過大な抗力が不規則的に発生し、制御が困難となる状況があった。本研究は、この抗力の発生の要因を解明し、過大な抗力が生じない姿勢制御を研究することを目的としている。 令和1年度は、2次元モデルで二方法の数値解析を実施した。ひとつは、車輪が柔軟体として車輪と円筒との接触力を解析した。この方法は、構造体における不静定問題での荷重の計算法であるが、柔軟体の剛性で接触力が定まり、制御における接触力の増大の要因は探れなかった。もうひとつは、車輪は剛体として、下部は姿勢のPID制御、上部は下部位置のPID制御による姿勢調整法を解析し、静止から姿勢制御の動作開始時に抗力は減少するが、目標に近づくにつれ増大し、その値は目標角度に依存することを明らかにした。 自重を利用した昇降ロボットの関連研究として、チェンソーを搭載し螺旋昇降する枝打ちロボットへの応用を検討した。昇降ロボットでは、枝等の突起物との衝突が生じることがあり、この回避が求められる。そこで、ロボット外乱オブザーバによる突起物との接触力と接触位置の推定法を研究し、実用的な精度で推定できることを実験検証した。この結果は、特許出願し国際会議ARIC2019で講演発表(Best oral presentation受賞)した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和1年度の解析により、車輪を柔軟体として車輪と円筒との接触力を解析する方法では、制御における接触力の増大の要因は探れないこと、車輪を剛体として下部は姿勢のPID制御、上部は下部位置のPID制御による姿勢調整法では、静止時から姿勢制御の動作開始とともに抗力は減少するが、目標に近づくにつれ増大し、その大きさは目標角度に依存することが明らかになった。この現象の要因の解明とともに、この性質を考慮した制御法が課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、昇降中における姿勢制御を考察する。接触点では昇降に必要な接線力が加わり、円筒と車輪との間に滑りが生じやすくなるが、抗力が増加すると増加しないときがあり。こうした関係を解析的にあきらかにする。姿勢制御の高精度化と円筒軸と中心軸の位置づれがないことも求められる。姿勢誤差を漸近的に零に収束させながらも抗力が増加しない姿勢制御法を明らかにする。 なお,アームによる姿勢制御のみでは困難なときは、上下の車輪の速度制御との協調による昇降ロボットの姿勢制御を研究する。上下の車輪に速度差を与えると、昇降ロボットが直動上昇と回転の運動の合成により抗力の増加を抑えられると考える。 さらに、令和1年度に理論化した外乱オブザーバを用いた接触位置の推定法を、枝打ちでのチェンソーと枝の接触位置の推定への応用を試みる。接触位置が計測できる枝噛みによるリトライが効果的に行える。これまで、外乱オブザーバを用いて接触位置を推定する研究はなく、本課題は昇降ロボットにおけるインテリジェント制御の重要な関連研究である。
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