円筒昇降ロボットは、街路灯や電柱等の点検ロボット、森林での枝打ちロボット等幅広い応用がある。自重を利用した昇降ロボットが細りのある円筒を昇ると、細りの影響でロボットの姿勢が変化し、点検や作業が困難となる。この解決のため、上下の車輪間の水平距離を調整する姿勢調整機構を設け、下部は姿勢のPID制御、上部は下部位置のPID制御による姿勢調整法が考案されている。しかし、自重を利用した昇降ロボットは、車輪と円筒との接触点での抗力や摩擦力が一意に定まらない不静定問題を抱えているため、姿勢調整時に過大な抗力が不規則的に発生し、姿勢調整が困難となる状況が生じる。 本研究は、この不規則的に生じる過大な抗力の発生の要因を解明し、その解明に基づいて原理的に過大な抗力が生じない姿勢制御を研究する。このため,次のステップで研究することとした.1) 静止時での姿勢制御を考察する。実験観察と力学的釣り合い式から、抗力が増加する要因を解明する。2) 次に、昇降中における姿勢制御を考察する。接触点では昇降に必要な接線力が加わり、円筒と車輪との間に滑りが生じやすくなるが、抗力が増加すると増加しないときがあり。こうした要因を解明する。3) 姿勢誤差を漸近的に零に収束させながらも抗力が増加しない姿勢制御法を明らかにする。アームによる姿勢制御のみでは困難なときは、上下の車輪の速度制御との組み合わせによる昇降ロボットの姿勢制御を研究する。 不静定問題を抱える機構の姿勢制御の研究例は世界的にもなく、機械制御の地平を広げる研究である。
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