研究課題/領域番号 |
18K04018
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
古屋 耕平 岐阜大学, 工学部, 准教授 (40580056)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 過渡応答 / 構造音響連成系 / 有限要素モデル / モデル精度 / 相互平均コンプライアンス / 簡易パネル寄与解析 |
研究実績の概要 |
近年,設計の効率化の観点からモデルベース開発と呼ばれる設計法が広く利用されている.本研究では,自動車など構造系と音響系が連成し,かつ多数の部品からなる系の振動騒音特性を予測する有限要素モデルの精度向上を目的に,過渡応答を利用してモデルと実物の乖離の原因(乖離要因)を特定する方法を開発する.本研究は,乖離要因の特定に過渡応答を利用する点,過渡応答に含まれる各部品の寄与を時間領域の相互平均コンプライアンスや簡易パネル寄与解析で評価する点が従来の方法と異なる点である. R1年度には,昨年度実施した複数のはりをボルト締結した構造物(構造系単体)での検討結果を日本機械学会論文集へ投稿し,掲載された(査読あり,2020 年 86 巻 883 号 p. 19-00369). またR1年度は一端に開口部を持つアクリル音響管を対象に,音響系単体で過渡応答を利用して乖離要因を特定可能か検証した.具体的には有限要素モデルでは音響管を完全剛壁の境界条件とし,実際の音響管に存在する開口部を乖離要因として特定可能か検証した.基礎検討はH30年度から継続していたが,有限要素モデルで計算した音圧の過渡応答に含まれる剛体モードの取り扱いに苦労した.具体的には,剛体モードの影響で,計算した音圧の時刻歴応答がドリフトしてしまい,どの時刻までを有限要素解析と実験で比較するべきかの判断が困難であった.また実験においても,音響管内に設置した音響加振器が過渡応答へ影響していることが有限要素解析と実験の過渡応答の比較から判明した.これらの課題に対して,音圧応答に対する音響管の各面の寄与を簡易パネル寄与解析で可視化すると同時に,音響加振器を音響管外へ設置するなど実験条件も整えることで,過渡応答を利用して音響管に存在する開口部が乖離要因であると特定可能できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画ではH30年度に構造系単体の乖離要因を特定し,R1年度にその結果を論文投稿すること,および,音響系単位の乖離要因を特定することを目標としていた.これらの目標を達成できたため,おおむね順調に進展していると判断した.R2年度は,音響系単位の乖離要因を特定した結果を論文投稿すると同時に,構造音響連成系の連成のモデル化に乖離要因がある場合を対象に検討を行う.
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今後の研究の推進方策 |
R2年度は,音響系単位の乖離要因を特定した結果を論文投稿すると同時に,構造音響連成系の連成のモデル化に乖離要因がある場合を対象に検討を行う.現状では,構造系は板構造を想定しており,板と空気が直接接する場合を有限要素モデルでモデル化し,板の一部に吸音スポンジなどを設置して音が放射される場合を実験で行う.そして有限要素モデルと実験の過渡応答を比較することで乖離要因を特定可能か検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
アクリル製音響管の製作費用が予定より低価格で実現できたこと、および予定していた海外国際会議への参加を見送ったため次年度使用額が生じた。次年度使用額は今年度予定している実験装置の作成、および、センサー購入費に充てる予定である。
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