研究課題/領域番号 |
18K04025
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
佐々木 卓実 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (80343432)
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研究分担者 |
長 弘基 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (00435421)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 形状記憶合金 / 座屈 / 復元力 / 負剛性特性 / 除振 |
研究実績の概要 |
2019年度、本研究では (i) 形状記憶合金の材料非線形性がはり座屈後の負勾配特性および動力学特性に与える影響の検討、および (ii) 材料の熱処理条件および変形速度が復元力特性に与える影響の検討を行った。以下にその概要を示す。 前年度に行った形状記憶合金の材料非線形性と構造非線形性を考慮した有限要素解析により得られた基礎的な解析結果を補完するため、形状記憶合金の材料非線形性が復元力特性に与える影響をより詳細に調査し、除振要素に適用するための復元力のデータベース化を行った。その結果、座屈後圧縮過程での復元力は材料のオーステナイト相におけるヤング率とオーステナイト相からマルテンサイト層へ相変態する際のプラトー領域の剛性率の差が大きいほど、より大きな負剛性を示すこと、また、相変態(オーステナイト相からマルテンサイト相)する材料の体積割合の変化率が大きい領域でより大きな負剛性を示すことを確認した。また、形状回復過程では、材料の応力ひずみ曲線におけるヒステリシス特性が復元力に大きな影響を与え、特にヒステリシスの小さい材料の場合に負剛性が発現しやすいことを確認した。 次に、実験的な検証として、熱処理条件を変えた材料による復元力特性の検証、および、座屈後の剛性特性に与える材料の変形速度の影響の調査を行った。ここではTi-Ni系形状記憶合金を用いて実験を行った。熱処理条件による復元力特性の検証では、熱処理時間および熱処理温度が座屈後復元力に大きな影響を与えることを確認した。また、変形速度による復元力の検証では、座屈後の剛性特性が変形速度を大きくするほど負勾配から正勾配側へ変化することを確認した。また、同じくTi-Ni系形状記憶合金の軸方向振動を模擬した往復変形時には、復元力のヒステリシス特性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、材料の寸法パラメータと復元力特性、および材料の動的力学特性を数値解析により検証し、また、座屈後形状記憶合金の復元力の変形速度依存性について、実験的に検証した。数値解析による検証では、形状回復過程での相変態を考慮した復元力を推定することが可能となり、当初の計画以上の成果を得ることが出来た。また、座屈後形状記憶合金をパッシブ除振系へ適用し、除振性能検証のための予備実験を行った。この中では除振系の動力学特性の基礎データの取得するため、除振系の周波数応答を調査し、系の固有振動数や基礎的な除振特性を検証した。これらの結果より、除振要素を設計する際の基礎的なデータを構築することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画に沿って研究を遂行する。まず、これまでに蓄積した数値解析および実験結果踏まえ、さらに今年度に行う検証結果を加えることで、最適な除振性能を与える形状記憶合金の材料特性を明らかにする。また、各種組成で作成された形状記憶合金の座屈後復元力特性を調査することで、最適な特性を与える材料組成を検討するためのデータを収集する。まずはアルミニウム系形状記憶合金および銅系形状記憶合金の調査を検討している。これらの結果を用いて、最適な特性を実現するための形状記憶合金の生成法について検討する。 また、より最適化された材料特性をもつ形状記憶合金を用いた除振系を作成し、その除振性能を検証する。さらに、本装置のデモンストレーション用の装置を作成し、本要素の適用対象の拡大に努める。これらの成果により、簡便・小型を維持しつつ、従来に比べて飛躍的に簡便な構成で高度な除振性能を有する除振システムを実現し、学術的にも産業的にも貢献できる技術の確立を目指す。
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