研究課題
2020年度に行った研究の概要を以下に示す。まず、材料の相変態状況を形状記憶合金はりの変形形状から推定する方法を開発した。具体的には、実稼働状態のはりの変形形状と、線形座屈理論から導出される変形形状との相関係数を求めることで、はりの相変態を予測することを可能とした。本研究では相関係数としてMAC値を用い、MAC値と相変態割合との負の相関を見出すことで相変態状態を推定することを可能とした。次に、形状記憶合金を用いた除振系の動的力学特性を有限要素法を用いた非線形時刻歴応答により検証した。検証の結果、除振系が共振する際は振動中に相変態が発生し、非線形な応答を示すことを確認した。また、非線形応答時にはヒステリシス特性による構造減衰により、一般の金属に比べて応答を小さくし、除振要素として優れた効果を示すこと確認した。次に、昨年まで多用したTi-Ni系形状記憶合金に代わり、より高性能化が期待できる材料としてCu-Al-Mn系形状記憶合金の力学特性を実験的に検証した。検証の結果、Cu-Al-Mn系形状記憶合金は座屈後の接線剛性の絶対値が極めて小さく、除振性能を向上させるのに効果的な材料であることを確認した。昨年度までに確認した形状記憶合金の材料・構造非線形性、材料の寸法パラメータおよび材料の組成・使用温度条件が負勾配特性に与える影響の検討、材料非線形性がはり座屈後の動力学特性に与える影響の検討、および材料の熱処理条件および変形速度が復元力特性に与える影響の検討結果と、2020年度の研究成果を合わせることで、座屈後形状記憶合金を用いた除振系が、従来よりもシンプル、軽量かつ簡易な構造で高度な除振を可能とすることを示した。このような特性を活かすことで、本システムが工学システムのより高度な性能追求、また新たな価値の創出に寄与することが期待される。
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