研究実績の概要 |
東日本大震災のような津波による災害地域において車両による救助活動や運搬活動を行う際, 瓦礫の規則性のない凹凸や泥などの流れ込みよって形成された多くの軟弱地盤によって, 車両は身動きがとれなくなってしまう.また, 瓦礫の鋭利な部分によっていとも簡単に車両に装着されているタイヤはパンクをし, ますます動けなくなってしまう. これらの理由から被災地環境で活動できる“パンクしない”タイヤの開発技術に挑戦する. 具体的には,「高周波強制振動の発生・伝播(高密度化)と停止」の組み合わせによって引き起こされる軟弱地盤の締め固め効果を利用し, 回転運動しているタイヤの駆動力を増加・促進させる能動型地盤環境可変インテリジェンスタイヤを開発する. 以下に2018年度に実施した概要を記述する. まず, 単輪による走行試験のインフラを構築した. その後,スポーク部分にあたる面に振動を誘発でき偏心モータ取り付け部を形成した車輪の製作を行なった. その後, 振動させた車輪の周りの軟弱地盤のせん断強度について調査した. その結果, 振動前後で, 車輪周りの軟弱地盤のせん断強度は, 223%増加している. つまり振動前と比べて振動後は約2倍以上, 地盤の強度が硬くなっていることを示している. 実際に力覚センサで計測したところ同様な2倍以上の牽引力上昇が見られた. さらに走行試験として任意に滑りを与えた時の牽引力測定を行い, 振動与えないときと比べて大きい牽引力となることがわかった. ただし, 振動による沈下現象も同時に起きており, 沈下防止となる形状も同時に必要となるということがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の研究成果により振動伝播・停止により砂のせん断強度を増加させ, かつ走行性能に高い影響があることがわかった. そこで, 2019年度では, 自走走行させ, その際に車輪に搭載されている偏心モータにより車輪ごとに振動させ,振動伝播・停止を繰り返しながら, スリップといった課題となる走行について改善案を導く. この際, 簡易アルゴリズムを構築し, 実際に走行用テストベッドに実装する. また, 走行確認および走行性能の改善が見られたら, 地盤との接触情報をセンシングする機能を実装する. このセンシング機能を用いて, 地盤の硬さを把握しながら走行を実現させる. また, 2018年度の課題となった沈下防止については, テストベッドの車輪位置の構成や車輪形状を検討しながら改善をはかっていく.
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