研究実績の概要 |
東日本大震災のような津波による災害地域において車両による救助活動や運搬活動を行う際, 瓦礫の規則性のない凹凸や泥などの流れ込みよって形成された多くの軟弱地盤によって, 車両は身動きがとれなくなってしまう.また, 瓦礫の鋭利な部分によっていとも簡単に車両に装着されているタイヤはパンクをし, ますます動けなくなってしまう. これらの理由から被災地環境で活動できる“パンクしない”タイヤの開発技術に挑戦する. 具体的には,「高周波強制振動の発生・伝播(高密度化)と停止」の組み合わせによって引き起こされる軟弱地盤の締め固め効果を利用し, 回転運動しているタイヤの駆動力を増加・促進させる能動型地盤環境可変インテリジェンスタイヤを開発する. 2018年度は単輪による振動-停止の効果について実験にて証明した. 2019年度に実施した概要は以下を記述する. まず複数輪を用いた車両を用いて「移動」に本当に有効であるかを検証するため各車輪に振動機能を搭載した4輪小型車両(330×300×250mm)を製作した. 車輪については形状検討を行い, 振動の有無, そして表面状の違う車輪(3種類:突起物なし, 突起物あり, 凹み形状)を用いて単輪による振動試験を実施した. その時の各車輪における飽和沈下量および車輪周辺のせん断強度測定から突起物なしの車輪がもっとも沈下量が多かったがせん断強度の上昇率(振動なしとの比較-突起物なし:2.75倍,突起物あり:1.68倍, 凹み形状:1.59倍 )はもっとも高かった. 次に4輪小型車両の走行試験について述べる. 走行試験では軟弱地盤斜面(けい砂5号)上を登坂させる. 振動-停止を繰り返しながら, スリップ状態を把握した. 走行試験からスリップ率は斜度8, 10度時は20%減, 斜度12o時は17%減となり, 振動-停止の効果についてしっかり現れる結果となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の実験結果の知見から, 振動を与えることにより締め固め効果やせん断強度の上昇を見られるが, 車輪自身が沈下してしまうという問題があがられた.そのため, 2019年度では, 以下の2点について検討した. (1)複数輪小型車両を用意し, 1車輪ごとに振動を与え, 沈下しづらくする, (2)沈下しづらい車輪形状を検討する. 小型車両を用いて振動を与えるシーケンスなどもいろいろと検証できる事項であり, さらに研究を進めていきたい. また, 振動を与えた時, 車輪形状によって車輪下部にある砂の流れは異なるため, 沈下と車輪形状についてさらに議論を深めていくことを考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は, 触覚センシングによる地盤状態システムに, 振動伝播-停止による有効性を組み込んだ走行アルゴリズムを構築し, 試験を実施する予定である. しかし, 実験等が行えないことも考えられるため, 研究内容や計画がない範囲内で, 2019年度中に実験にて得られた振動伝播-停止による効果を解析することや、走行シミュレーションの実施などを行なうことも想定している.
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