研究課題/領域番号 |
18K04030
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
藤本 滋 神奈川大学, 工学部, 教授 (80386888)
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研究分担者 |
一木 正聡 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 総括研究主幹 (00267395)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 圧電素子 / ランタン / 振動発電 / 設備状態モニタリング / PZT素子 / 動荷重 / エナジーハーベスティング / 添加剤 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、産業プラントに設置された機械設備に発生する振動を、出力特性を高めた圧電素子(以下PZT素子)を積層した積層圧電素子を用いた高出力振動発電素子により電気変換し、これを電源として加速度センサや加速度データを送信する無線装置を駆動し、離れた場所でモニタリングすることで機械設備の作動状態や故障を監視する手法を開発することである。 平成30年度は、PZT素子に電気的特性を向上させるLa(ランタン)を最適な濃度1mol% で添加した素子を試作した。さらに、この素子を11層積層化した積層PZT素子を5体試作した。 このLa添加PZT素子単体の発電性能に最も影響のある圧電定数d33を調べた結果、無添加PZT素子に比べ約5.8倍となることを確認した。また、La添加積層PZT素子のd33は、La添加PZT素子単体に比べ約12倍となり、大幅に高い電気的特性を得られることを確認した。 さらに、La添加積層PZT素子の振動発電特性を評価するため動荷重を与える振動発電実験を実施した。実験結果において、動荷重の振動数が約60Hz、荷重が250Nの場合、発生電力は3.78mWと大きな電気出力が得られることを確認した。また、本研究以前に我々が開発したNb添加積層PZT素子の発電特性と比較すると約1.2倍の電力出力を得られることも確認した。以上の結果より、La添加積層PZT素子を用いると現在開発中の設備状態監視用加速度モニタリングシステムを駆動できる見通しが得られた。 以上の結果を、La添加PZT素子単体の発電特性について第34回「センサ・マイクロマシンと応用システムシンポジウム」(2018-10)にて口頭発表した。La添加積層PZT素子の発電特性について日本機械学会関東支部第25期総会・講演会(2019-3)にて口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに提出している交付申請書の平成30年度計画においては、「①高出力圧電素子の開発(圧電素子に電気的特性を向上させるためにLa(ランタン)を最適な濃度で添加し、その電気的特性や動荷重に対する発電特性を把握する)、②La(ランタン)を最適な濃度で添加した圧電素子を最適な積層数で積層化した積層圧電素子を試作すると共に試作した積層圧電素子の電気的特性や動荷重に対する発電特性を把握・評価する。」となっている。実際に平成30年度の研究はこれらの計画に従って全てを実施し、その成果については学会ににて報告・公表しているが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は順調に研究を推進できていることから平成30年度初頭に提出した交付申請書に従い計画通り推進する予定である。具体的には以下の通りである。 2019年度においては、①試作した積層圧電素子の発電で駆動できる加速度センサとそれを駆動するために安定した電力供給ができる電力駆動回路を設計・試作する。②積層圧電素子、加速度センサ、電力駆動回路を用いた振動発電実験を行い、加速度センサの駆動性を評価する。③複数の積層圧電素子を用いてこれらの発生電力を集電する回路を試作すると共に、この発電装置を用いて上記の②と同様の加速度センサ駆動評価試験を行う。④加速度センサの出力信号をデジタル化し送信できる省電力型の送信・受信回路の設計・試作検討を行う。⑤以上の研究から得られた成果の研究分担者とともに学会発表を行う。 2020年度においては①前年度検討した送信回路を試作するとともにその作動性を確認する。②積層圧電素子または複数の積層圧電素子、集電回路、電力駆動回路、加速度センサおよび送信・受信回路を組み合わせた振動発電実験を行い、加速度計測信号の送受信(モニタリング)性能を評価する。③実際の振動する機械設備に積層圧電素子を設置して上記②の実験を行うフィールドモニタリング実証実験を行うことにより、実際の機械設備やプラント設備への適用性を評価する。④以上の研究から得られた成果を研究分担者と共に学会発表を行う。⑤3年間の研究をまとめ、研究分担者と共に学会に論文を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用見積額より若干のコストダウンができたため。次年度は交付額が少なくなるため、上記使用額を繰り越して次年度の研究のために活用する予定である。
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