研究実績の概要 |
本申請課題は,冗長な拘束や特異姿勢を有する系に対しても適用可能な,マルチボディシステムの高速・高精度な汎用解析法,解析コードの開発を目的としている.初年度の2018年度は,摩擦が作用しない場合に,拘束条件に関するヤコビ行列の零空間行列を効率的に求め,運動解析法を行う方法およびこれに基づくの解析コードを開発した.開発した方法の特長は,不要な変数を消去して計算を行うため効率が高いことと,特異姿勢に対してもほとんど問題なく解析可能なことである.2年目の2019年度は,運動解析の結果を利用して拘束力を効率的に求めるための方法および解析コードの開発を行った.この方法の特長は,運動解析と同様に不要な変数を消去して計算を行うため効率が高いことと,拘束条件が冗長な場合にも適用できることである.最終年度の2020年度は,例えば摩擦力などのように拘束力に依存する力が作用する場合の解析問題に取り組んだ.この問題は,系の運動を求めるためには拘束力が必要となる一方で,拘束力を求めるためには系の運動を必要とすること,すなわち両者を一体として求める必要があることを意味する.この問題を解決するため,反復法を用いて解析を行う方法を考案した.考案した方法では,まず拘束力に依存する力は作用しないとして解析を行い,得られた結果を利用して拘束力を求める.次に,得られた拘束力を用いて,これに依存する力が作用するとして運動を求める.これを解が収束するまで繰り返すことで最終的な解を求める.この考えに基づいて,これまでに開発してきた解析コードを拡張する形で,運動解析を行うことができるコードを開発した.
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