研究課題/領域番号 |
18K04035
|
研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
阿南 景子 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (30346077)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 機械力学 / 流体関連振動 / 自励振動 / 振動特性 / 安全対策 |
研究実績の概要 |
大型テンタゲートの動的安定性を確保するために、実現性のある方法として巻上げワイヤーの剛性を下げる方法の提案を行った。巻上げワイヤーの剛性を下げることで、ゲートの動的安定性は確保しやすくなることはわかっているが、放水時にゲートを巻き上げるという本来の用途に支障が出る可能性が考えられるため、その両者のバランスを考慮し、巻上げワイヤーの中間に特殊なばね装置を取り付ける手法について検討した。提案の安全対策案について、ゲートの全質量を支えることができ、かつ、ばね定数が小さな特殊なばね装置を検討した。大型三次元モデルゲートを対象に、具体的な特殊ばね装置の設計・製作を行い、それによる動的安全性確保の効果を確認するためのモデル実験を行った。 第一に、圧縮コイルばね装置をワイヤーロープの中間に設置する方法を検討した。設計した特殊圧縮ばね装置を大型三次元モデルゲートに取付けて実験を行い、その効果を確認した。ばね定数の異なる3種類の特殊ばね装置を作製し、実験を行った。いずれの場合にも、振動発生時の定常振幅を抑えるという一定の効果は得られたが、ゲートの全質量を支えるためにどうしてもばね定数をある程度大きくする必要があった。そのため、ゲートの固有振動数を十分に低下させることができず、完全な動的安定は確保できなかった。 そこで、第二に、耐力が大きいさらばね装置をワイヤーロープの中間に設置する方法について検討した。さらばねの変形量が小さいため十分な効果を得るためには約100段重ねる必要があった。ばね装置の全長が長くなったが、コイルばねを用いた場合よりも効果的にゲートを動的安定に導けることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲートの動的安全性を確保するための具体的な手法について検討した。ゲートを巻き上げるワイヤーケーブルの中間に特殊なばね装置を設置することで、ゲートを巻き上げるという機能を持ちつつ、動的安定を確保する方法を検討した。コイルばねと皿ばねを使用する方法をそれぞれ検討し、両者ともに一定の成果が得られている。引き続き条件を変えて実験を行うことで、データの信頼性を高めることができると考えられる。 実験により提案手法の信頼性が高められれば、実用ゲートへの適用について、ゲートオーナーや関係機関と交渉を行うことが可能になる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題で提案している、ワイヤーケーブルの中間に特殊なばね装置を設置することでゲートの動的安定を確保する手法について、引き続きモデル実験を行い、有用性の検証と実機への適用の検討を進める。 2018年度に得られた結果を踏まえ、圧縮コイルばねを用いる手法についてはその防振効果を高めるための検討を行う。さらばねを用いる手法については動的安全性確保のための最適な諸元を検討する。同時に、できるだけコンパクトな特殊ばね装置の検討を行う。さらに、これまでに振動実地調査を行い動的に不安定であることが確認されている実用テンタゲートの場合について、提案の手法を用いる場合の最適なばね装置の設計を行う。それらの結果を総合し、実用テンタゲートでの実証試験についての打ち合わせを進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた加速度計の購入を控え、現有のものを使用した。また、特殊ばね装置の設計・製作に当たっては、一部の部品を流用できる形状にしたため、消耗品費の支出が抑えられた。国内学会に参加し、情報取集を積極的に行ったが、国外での協力者との打ち合わせを実施しなかった。以上により、次年度使用額が生じた。 次年度使用額については、特殊ばね装置の種類を増やして実験を行うため、その製作・加工に使用する予定である。また、国際会議への出席を計画しており、資料収集および意見交換を行う予定である。
|