研究課題/領域番号 |
18K04036
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山本 健 関西大学, システム理工学部, 教授 (10370173)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | キャビテーション / プランクトン / マイクロカプセル / 超音波 / 機械的共振 / ずり応力 / 不活性化 |
研究実績の概要 |
申請者等は,今までに大きさ数μmの球状微生物(菌類やプランクトン等)を懸濁した水中で,数百kHz~数MHzの高周波超音波キャビテーションを発生させると,一般的な数十kHzの超音波ホモジナイザーより高効率に微生物の細胞を破壊できることを発見した.しかも,細胞の破壊効率には周波数依存性があり,微生物の種類によって異なることを見出した.さらには,数μmのマイクロカプセルの破壊実験においてもサイズや球殻の厚みに起因する周波数依存性を確認した.この結果を踏まえて,数百kHz~数MHzの高周波超音波を照射した際の球状微生物及びマイクロカプセルのサイズ分布評価(ナノ粒子径分布測定装置)による破壊過程の解明,球状物体の物性測定(走査型プローブ顕微鏡)及びそれらを用いた破壊メカニズムの理論的解明,そして多分散粒子系におけるサイズ選択的超音波破壊による粒径フィルタ効果の達成を本研究の目的としている. 当該年度は,主に球状物体の物性測定(走査型プローブ顕微鏡)及びそれらを用いた破壊メカニズムの理論的解明を行った.球状の菌類(イースト菌や枯草菌等)の不活性化実験も行ったところ,不活性化の原因は主に細胞の破砕であった.また,大きさが数μmから数百μmの海洋性植物及び動物性プランクトンの超音波キャビテーションの不活性化実験も行い,プランクトンのサイズによって不活性化の周波数依存性が見られた.不活性化(主に破壊)の原因は,カプセル破壊のような機械的共振ではなく,キャビテーション気泡の振動が励起するずり応力が主たる機構であると予想できる結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は,マイクロカプセルの物性測定及びそれらを用いた破壊メカニズムの理論的解明を行っている段階である.また,多分散のマイクロカプセルの超音波破実験を行い,パーティクルアナライザーで解析することにより,実験的な側面からも破壊のメカニズムの解明を目指した.一方,菌類をサンプルとした超音波による不活性化実験を行い,それらの不活性化の要因は破壊によるものとラジカルによる酸化が原因であることが分かった.一方,海洋性のプランクトンの不活性化実験では,サイズが小さいものには高周波が,大きなものには低周波が有効である結果を得た. 走査型プローブ顕微鏡のフォースカーブや弾性率マッピングモードを用いて球状物体の弾性率を測定している.弾性率測定は,測定誤差が非常に大きく,個体差もあることから,相当数の実験が必要であった.メラニン樹脂を主成分としたマイクロカプセルの弾性率は,数百 Paであった.菌類(イースト)に関しても同様に測定をしたところ数十MPaであった.この弾性率からShell modelによるマイクロカプセルや菌類の各振動モードの共振周波数及び表面積変化率を計算した.呼吸振動する気泡から直接ずり応力を受けているのであれば,球状物体は4極振動モードで表面積変化率が最大となるはずであり,実験の傾向を説明できる可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針は,多分散粒子系における選択的超音波破壊を主に行っていく.そのためには,数μmから数百μmの多分散のマイクロカプセルを入手することが必要であり,カプセル製作企業と打合せ中である.また,菌類の分散は小さいため,サイズの異なるプランクトンの破壊実験をさらに進める必要がある,海洋性のプランクトンの捕獲は季節的な要因が伴うため,今年度の秋までに複数周波数の超音波破壊実験を行う予定である.また,マイクロカプセルや微生物の弾性率の測定は大きな誤差を含み,破壊強度を測定できないため,微小物体用圧縮試験も予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費のうち実験試料(消耗品)の消費が予定より少なかったため,当該助成金が生じた.本助成金は物品費と合わせて実験試料に使用する予定である.
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