超音波キャビテーションによる多分散粒子系におけるサイズ選択的超音波破壊による粒径フィルタ効果の達成を目指した. 球状物体のサイズによって周波数特性が異なるため,任意のサイズの共振周波数の超音波を照射することにより,そのサイズだけを選択的に破壊することに成功した.また,理論的な計算では,同じサイズでも球殻が厚くなると,球殻の表面積変化率ピークが高周波に移動し,値が低くなるため,破壊にはより多くのエネルギーが必要となることが分かった.また,球殻の弾性率,内包物の粘性や密度を変化させると,表面積変化率だけではなく,Q値が変化するため,マイクロカプセル自身に独自の周波数特性を付加することも可能であることが分かった.一方,球状物体の破壊のメカニズムは,球殻の機械的共振だけではなく,気泡崩壊時のマイクロジェットやずり応力による破壊が複合的に関わることが実験的に検証できた.そのため,対象のサイズと気泡のサイズ関係によって,破壊に有意に関わる効果が異なる.気泡振動を数学的に表現するケラー・ミクシス方程式から,初期気泡半径,音圧及び周波数を変化させて,気泡周辺に発生するずり応力,圧力変動及びマイクロジェット応力を計算した.合わせて,サイズの異なる澱粉粒子に超音波照射することにより,マイクロジェットの打ち込みの頻度や応力を実験的に検討した.微小物体の破壊には,物体のサイズと気泡のサイズの大小関係が重要であり,対象が気泡より大きい際は,マイクロジェットによる破壊が有意となるが,周波数が高いとマイクロジェット応力が低くなることが実験的にも理論的にも検証できた.また,計算による応力の値は,微小圧縮試験機による実験データとの比較を通して妥当であることが分かった.
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