研究課題/領域番号 |
18K04037
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山田 啓介 関西大学, システム理工学部, 准教授 (80456798)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | モード解析 / 振動解析 / ヒステリシス減衰 / 連続体 / 連成振動 / 強制振動 |
研究実績の概要 |
(1)ヒステリシス減衰を有する振動系の自由振動解析 複素密度や複素ヤング率,複素ばね定数などのように,振動系の減衰を損失係数で与えることも多い.このような減衰をヒステリシス減衰と称する.振動系の自由振動は,同次形の微分方程式の一般解で与えられるが,ヒステリシス減衰を持つ振動系の微分方程式の一般解は振動が発散し,実現象を表さない問題がある.この問題に対して,本研究ではインパルス加振やステップ加振による加振力をフーリエ級数展開することにより,自由振動の解を複数の加振振動数による強制振動の解の重ねあわせで与える方法を提案した.この方法を用いれば,ヒステリシス減衰を有する振動系であっても自由振動が収束する. (2)強制変位加振を受ける連続体のモード解析 特に音場では,加振源が強制変位加振でモデル化されることが多い.連続体の境界の一部が振動するわけであるが,このような場合に,強制変位加振を強制力加振と固定の境界に等価的に置換し,モード解析を適用する方法を提案した.本研究では一次元音場,多次元音場,はりの曲げ振動,平板の曲げ振動の四つの場合を扱った. (3)減衰を有するサイドブランチの最適調整 減衰を有する動吸振器に着想を得て,減衰を有するサイドブランチについて研究を行った.(2)の成果を用いて音場にモード解析を適用することにより,連続体の振動を等価なマスばね系で表現し,これを用いてサイドブランチの開口端補正を高精度に求める方法も提案した.サイドブランチの最適な固有振動数比と損失係数を求め,シミュレーションと実験で提案手法の有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体としての研究の進捗は,研究計画を追加して推進している状況であり,予定よりも進んでいるが,コロナ禍により学外での成果発表が十分には行えなかったため,全体としてはおおむね順調に進展していると判断した.発表が行えていない研究成果については2021年度以降に発表する予定である.以下に,個別の研究項目の進捗状況について簡単にまとめる. (1)ヒステリシス減衰を有する振動系の自由振動解析 集中質量系と連続系の両方について提案手法の有効性を確認した.国内学会で速報版を発表した段階であり,今後は完成版を論文に仕上げる必要がある. (2)強制変位加振を受ける連続体のモード解析 本研究の完成版を論文にまとめて日本機械学会のMechanical Engineering Journalに投稿し,掲載された. (3)減衰を有するサイドブランチの最適調整 本研究の完成版を論文にまとめて日本機械学会のMechanical Engineering Journalに投稿し,掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度もコロナ禍により,学会がオンライン開催に移行する傾向にある.また,研究代表者は学内の学術研究員の制度を利用して,2021年秋から海外で1年間研究を行うことを予定しているが,こちらも中止せざるを得ない可能性がある.このような状況のため,2021年度は学会発表の計画が立てにくく,研究成果の速報版を発表する機会を得ることが難しい.そこで,今後しばらくは速報版の発表よりも,より完成に近い状態の研究成果をまとめて,査読付きの論文集に投稿することを優先する計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は2020年度内に実験の実施や論文の投稿が完了しなかったためである.残額は本研究の実験に関わる消耗品の購入と,論文の英文校正に当てる計画である.
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