月や惑星の表面探査で求められる自然地形の移動では,低重力に長期間置かれた柔軟地盤の特性等,地上実験で検証できない要素が多く,移動時に得られる反力や走行効率を数値計算により検証し,設計へ反映させることが重要である.本研究では,グローサ(突起)付車輪等の移動機構と柔軟地盤の新たな力学的相互作用モデルの構築とそれに基づくグローサ形状の準最適設計結果の妥当性を実験的に検証することを目的としている.特に,グローサ形状に応じてスリップ率と沈下量の関係が変化することから,従来から用いられてきたスリップ率-牽引力の相関では見出すことができなかった,沈下量-牽引力の相関を評価基準とした沈下量の少ないグローサ形状を獲得することを目指している.2018年度,申請者が導出した様々なグローサ形状の反力推定式から導出される,準最適な形状を持つグローサ付き車輪の沈下-牽引力の結果に関して,国際会議にて公表し,専門家からコメントを獲得し,また,関連する研究の調査を行った.そして,(1)実験結果と数値計算結果の比較,(2)設計結果の性能を比較評価を一部進めた.2019年度グローサ付き車輪の設計製作を進めたところ,複雑な形状となるため,製造費用が非常に高額となることがわかった.そこで,車輪構造を支持構造(ジョイント含む)とグローサに分割して設計し直し,実装も含めた検討を行いその一つの解を得ることができた.2020年度,より,一般的なグローサも合わせて比較評価するために,3Dプリンタで最低限の強度を維持したグローサを作り,評価した結果,所望の性能(牽引力,ブルドージング力)を得るための手順を確認することができた.最終的には,沈下のしにくい,かつブルドージング力を確保できる正多面体形状のグローサを安価に製造する手段を得ることができた.
|